研究課題/領域番号 |
26370086
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
合田 正人 明治大学, 文学部, 教授 (60170445)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フランス思想 / ジャン・ヴァール / レオン・ブランシュヴィック / システム論 / スピノザ主義 / ユダヤ思想 / 新カント主義 / 多様体論 |
研究実績の概要 |
2014年度の研究実績について報告する。まず挙げるべきは、6月に河出書房新社より単著『思想史の名脇役たち』(288頁)を出版できたことである。同書では、19‐20世紀フランス思想に顕著な貢献をしながらも近年ほとんど顧みられることのない思想家たちを取り上げたが、最後の二章で、本研究の対象であるジャン・ヴァールとレオン・ブランシュヴィックについて論じることができた。ヴァールについては、アメリカ合衆国直前の彼の状況についてその詳細を辿り、また後者については、その晩年の哲学をスピノザとの関連で論じることができた。この点については、『思想』(岩波書店)スピノザ特集号(2014年4月号、288-308頁)に掲載された「レヴィナスとラカン――スピノザの徴しのもとに」でも関説することができた。 第二に、本研究計画の主軸をなすフランス共和国カンのIMECでのヴァール、ジャンケレヴィッチ未公刊文書の調査を、9月初旬に実施することができた。今回は短期間の調査にとどまったが、ヴァールの1939年のプラトン講義ノートを閲覧できたのは大きな収穫であった。この調査に先だち、パリの国立図書館でも両哲学者の文献調査を行うことができた。 第三に、6月末から7月初旬にかけて大阪大学にて開催されたドゥルーズ・アジア研究大会に参加し、New Introduction to the Problematics of Archipelagosと題した連続講義と基調報告を行った。ドゥルーズを中心にした発表ではあったが、そのなかで、ヴァール、グリッサンとの連関を「群島」という視点から示すことができた。この論点は、国際レヴィナス研究学会での7月10日の発表「〈ある〉の永遠回帰」、デリダ没後10年を記念して早稲田大学で開催されたシンポジウムでの11月25日の発表「縁から縁――ジャック・デリダとジル・ドゥルーズ」でも展開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンのIMECでの最初の調査を実施できたこと、また、拙著ならびに上記発表にて、直接的または間接的にジャン・ヴァールならびにレオン・ブランシュヴィックの哲学に言及し、それを分析することができたこと、この点では、本研究の初年度として概ね順調な展開であったと判断できる。 ただ、初回の未公刊文献調査がごく短期間のものにとどまったため、いまだ閲覧できていない未公刊文書が大量に残っており、今後どのように調査を進めるか、その点を改めて計画し直す必要が生じた。 特にブランシュヴィックに関しては、フランス国立図書館での調査の過程で、その数学論考を当時の科学哲学の状況との連関で論じる必要が痛感された。今後、周辺の科学者、科学哲学者をめぐる新たな調査が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後もフランス共和国カンのIMECでの文献調査を進めるが、閲覧の条件が大変厳しいため、2015年度は早期に渡仏の企画をたて、重要な未公刊文献の閲覧予約を行う必要がある。時期としては8月末から9月初旬を予定している。その際、フランス国立図書館、パリの全イスラエル同盟文書館でも、特にブランシュヴィックをめぐる調査を行う。 ジャン・ヴァールの博士論文『英米哲学における多元主義哲学』の翻訳に着手する(月曜社より刊行予定)。 ピエール・デュエム、アンリ・ポワンカレ、エミール・メイエルソンら、ヴァール、ブランシュヴィックの周辺にいた哲学者、科学者たちについての文献を2014年度にあるていど蒐集できたので、彼らの思想についての調査を拡充させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の対象となっているジャン・ヴァール、レオン・ブランシュヴィックの未公刊文書の調査をフランスはパリの国立図書館、全イスラエル同盟文書館、カンのIMECにて継続する必要がある。 また、両哲学者の周辺で活躍していた哲学者、科学者たちの文献を更に蒐集する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
夏期休暇中、8月末から9月初旬にかけて、パリとカンにてそれぞれ一週間ずつ文献調査を実施する。 上記、関連書籍については書誌情報にもとづき随時発注する。
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