研究課題/領域番号 |
26370088
|
研究機関 | 清泉女学院大学 |
研究代表者 |
芝山 豊 清泉女学院大学, 人間学部, 教授 (20320947)
|
研究分担者 |
岡 洋樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00223991)
都馬 バイカル 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00434457)
荒井 幸康 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, その他 (80419209)
滝澤 克彦 長崎大学, その他部局等, 准教授 (80516691)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | モンゴル / 宗教思想史 / キリスト教 / 聖書 / 翻訳史 / 翻訳論 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、モンゴル語訳聖書に関する資料、情報の収集を各分担領域において行い、共有された資料および情報をとりまとめてデータベース化するとともに、研究分担者が各専門領域の見地から分析を行った。 資料収集は、モンゴル国、カルムィク共和国、ロシア連邦、中国、内モンゴル、日本で行った。滝澤は、モンゴル国ウランバートルにおいて近年モンゴル国および中国内モンゴル自治区で出版されたモンゴル語訳聖書を収集し、各版の成立過程および影響関係に関する現地調査を行い、順次電子化し、データベース化した。バイカルは、これまでのモンゴル語訳聖書各版を比較分析するとともに、内モンゴルにおける20世紀初頭および現在における聖書翻訳の歴史的影響関係に関する調査を行った。荒井は、カルムィク共和国エリスタおよびロシア連邦モスクワにおいて、カルムィク語訳の聖書および関連する情報の収集を行った。芝山は、近年翻訳されたモンゴル語訳聖書について、スコポス理論の観点から分析を行い、現代モンゴル語訳聖書の各版における訳語、文体の比較とカトリックのモンゴル語訳カテキズムにおける翻訳の影響関係について明らかにした。 現地調査の情報は、7月13日および11月8日の2回の会議で報告、共有され、データベース化の方針についての議論が重ねられ、2014年度末に東北大学東北アジア研究センターで行われた公開研究会では、2014年度の資料収集と分析で得られた成果を発表し、岡の歴史学の観点からの分析を交えて、総合的な討論を行った。 これら研究の蓄積により、データベース化されたモンゴル語訳聖書の各バージョンの比較を通して、訳語選択の問題や、その背景にある翻訳思想、翻訳者間の歴史的影響関係などについて明らかにするとともに、モンゴルにおける宗教文化の交流および動態を理解する上で、看過されてきたキリスト教思想の歴史的有意性を示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現存するモンゴル語訳聖書のほとんどについて、現物を確認し、一定の範囲で、データベース化し、比較検討することを可能にした。 2015年9月にモンゴル国、ウランバートルで開催予定のシンポジウムの準備をおよそ完成することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に構築したデータベースをもとに、新たに収集した聖書翻訳に関連する周辺資料と関連づけながら、モンゴル諸語における聖書翻訳の宗教思想史的背景について、文学・宗教学・言語学・歴史学のそれぞれの専門的見地から分析する。特に、文学においては、聖書の各バージョンの影響関係や翻訳をめぐる思想史的背景についての分析を行う。また、宗教学においては、モンゴル語訳聖書の翻訳思想と宣教思想や神学との関わりについて分析する。言語学においては、語彙論的な観点から訳語選択における特徴やその背後にある世界観について社会言語学的に分析する。そして、歴史学においては、聖書翻訳やキリスト教宣教の全体的な経緯と影響関係と社会的背景、また、それらがモンゴル社会に与えた影響について分析する。 また、2015年は現存する最古のモンゴル語訳聖書が出版された1815年からちょうど200年にあたる。それに合わせ、モンゴル諸語の聖書翻訳に関する研究についての国際シンポジウムをモンゴル国ウランバートルにおいて開催する。5名全員がそのシンポジウムにおいて、その時点までの研究成果を発表し、各国の研究者との討論を行う。 ウランバートルでのシンポジウムの成果を踏まえ、カトリック関連宣教資料をベルギーのルーヴェン・カトリック大学図書館等において調査、収集し、残る重要調査地である英国において、英国外国聖書協会およびロンドン聖書協会の関連資料について、ケンブリッジ大学図書館、ロンドン大学図書館等で調査、収集する。 2014、2015年度の資料調査とその分析の成果、ウランバートルでの国際シンポジウムにおける議論と情報交換、および、最終年度の資料調査などの成果を踏まえ、日本国内で、シンポジウムを開催する。 その際、海外からの研究者を招聘する予定である。シンポジウム開催後、最終的な全体の総括を行い、報告書として刊行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者バイカルの日本国籍取得決定と取得後のパスポート発給に予想以上に日数が必要となり、当初、計画した海外渡航の日程の変更を余儀なくされため、初年度に予定した調査旅費支出が年度をまたぐ結果となったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
既に、平成27年4月に北京での調査を行い、支払いを行っているが、平成27年5月22日現在の残額については、今年度でのアメリカでの調査の旅費として支出される予定である。
|