本年度は本研究の最終年度に当たる。したがって、東アジア史学思想研究会を8回にわたり開催し、研究のとりまとめに努めた。開催日と招聘研究者・コメンテーターは以下の通りである。1.4月16日 尹健次(神奈川大学)崔真碩(広島大学)鄭栄桓(明治学院大学)2.5月21日 米谷匡史(東京外国語大学)洪宗郁(韓国・ソウル大学)車承棋(韓国・朝鮮大学)3.6月7日 呉佩珍(台湾・政治大学)殷暁星(立命館大学)4.7月16日 秉周(韓国・国史編纂委員会)原佑介(立命館大学)5.9月13日 呉光輝(中国・厦門大学)松川雅信(日本学術振興会特別研究員)6.10月7日 呉炳守(韓国・東北亜歴史財団)黄薇サン(立命館大学大学院)石運(立命館大学大学院)7.11月4日 朝井佐智子(愛知淑徳大学)朴海仙(日本学術振興会特別研究員)大平真理子(立命館大学大学院)8.12月9日 金坑(韓国・延世大学)黄鎬徳(韓国・成均館大学)尹健次(神奈川大学) これらの研究会を通じて、18~20世紀の日中韓のネットワークの構造、西洋思想とその翻訳の様相、近代以降における日本学術知の影響関係、近代人文科学としての近代歴史学(日本思想史学)の日本における成立と、それが東アジアに及ぼす作用・影響について、かなりの程度明らかにすることができた。また、東アジアの史学思想について、翻訳語を軸とするネットワークを思想史的に解明し、ことに1945年後の韓国や中国(台湾)における歴史書編纂について、戦前期の帝国日本を発出源とする近代学術知がどのような影響を与えてきたのか、また帝国日本に対する抵抗や葛藤が戦後のそれにどのような刻印を残しているのかについて、その基礎研究を進めることができた。これらについては、現在論文を執筆中で、成果は『東アジアの思想と文化』8号(刊行済)と9号(2017年度)に公表する計画である。
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