研究課題/領域番号 |
26370092
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
福中 冬子 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (80591130)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 現代音楽創作 / 社会と政治 / 冷戦 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、前年度からの取りこぼしの処理として、2回に分けて資料調査を行った。3月から4月にかけてはパリの国立図書館(フランソワ・ミッテラン本館)にて、Les Lettre Francaise, Le Temps Moderne,Carrefeurなどの定期出版物に掲載されたフランス進歩音楽家協会 L'Association francaise des musiciens progressistesおよび人民音楽連盟 La Federation musicale populaireによる、あるいはそれらに関連する記事を収集したほか、マーラー音楽資料館にて、戦後数年間、フランスの「左翼」音楽家の先峰的立ち位置を占めたシャルル・ケクラン関係の資料(プログラム・ノート、レクチャー用原稿、私信など)の調査を行った。すでに前年度の報告で述べたとおり、パリ解放(44年)から約10年に亘るフランス音楽創作は、早い周期で入れ替わった方向付けや「前衛」音楽の有り様、あるいは創作家と聴衆のの関係性などに下支えされ、非常に複雑な様相を呈しているが、その中で、「前衛」の探求と「音楽の象牙の塔化」の否定の間で大きく揺れ動くこととなった、親ソ(=反米)アーティストの立ち位置もまた非常に複雑かつ多様な動機に支えられている。その実態のドキュメントとしての、雑誌・新聞記事、音楽祭、レクチャーなどもまた、時に個人個人の政治的信条と、新たな音楽創作技法の追求との間で、時に矛盾を呈する発言をすることとなるアーティストの姿を如実に顕すことが明らかになった。とりわけ、興味深いのはルネ・レイボヴィッツの例だが、彼の一次資料は、国立図書館(音楽学部)に所蔵されている数点を除き、未だカタログ化されておらず、この面においては予期していたほど調査が進まなかったことは残念だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、前年度からの取りこぼしの処理として、2回に分けて資料調査を行った。3月から4月にかけてはパリの国立図書館(フランソワ・ミッテラン本館)にて、Les Lettre Francaise, Le Temps Moderne, Carrefeurなどの定期出版物に掲載されたフランス進歩音楽家協会 L'Association francaise des musiciens progressistesおよび人民音楽連盟 La Federation musicale populaireによる、あるいはそれらに関連する記事を収集したほか、マーラー音楽資料館にて、戦後数年間、フランスの「左翼」音楽家の先峰的立ち位置を占めたシャルル・ケクラン関係の資料(プログラム・ノート、レクチャー用原稿、私信など)の調査を行った。 また9月には、シカゴ大学附属レーゲンステイン図書館が所蔵する、52年および54年に「文化的自由のための会議」が実施した音楽祭(パリおよびローマ)関連の資料を調査した。この所蔵コレクションは「会議」関連ではもっとも包括的なもので、これまで調査した資料を補完する意味で、非常な有用性を持つことがわかった。 これらの調査の結果は、2017年3月に行われた第20回国際音楽学会にて発表した。 今年度は、2017年3月に、研究代表者の所属する東京芸術大学が主催となった行われた第20回国際音楽学会の準備に、予想を遥かに上回る時間を取られてしまい、当初2017年に予定していた補助的な資料調査を実施することができなかった。これは次年度に延期することなっている。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの最終年度にあたった平成28年度には、上に示したとおり、2017年3月に、研究代表者の所属する東京芸術大学が主催となった行われた第20回国際音楽学会の準備(実行委員およびプログラム委員として実務に携わった)に、予想を遥かに上回る時間を取られてしまい、当初2017年2月に予定していた補助的な資料調査を実施することができなかった。これは検証対象の時期におけるフランスの芸術思想と政治状況との「関係」を示す補助的資料の調査で、Galica等を通じて日本にて入手可能なもの以外の刊行物関係資料の収集であリ、主に在パリ・フランス国立図書館での作業が必要となる。これ2017年度中に行う予定である。 これらの調査結果から包括的に得られた知見は、現在オーストリアおよび台湾の高等機関に在籍する研究者と共同で行っている「世界音楽史」プロジェクトへと組み込まれることとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度末に、研究代表者が所属する大学で、第20回国際音楽学会大会が開催され、実行委員およびプログラム委員として、想定以上のタスクが生じた。そのため、2月に予定していた、取りこぼしの資料の収集を目的とした海外渡航を中止せざるを得なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上を受け、今年度(平成29年度)、前年度分の資料調査のため、海外渡航(パリ)を行う。
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