研究課題/領域番号 |
26370100
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
上山 典子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 講師 (90318577)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リスト / オペラ編曲 / 19世紀 / 音楽文化史 |
研究実績の概要 |
平成27年度はリストの芸術活動および19世紀前半の音楽史におけるオペラ編曲の位置づけを確認しつつ、リストがこれらの編曲に込めた音楽的表現の可能性について考察した。(そこには編曲を作り上げる芸術的作業だけでなく、完成した編曲の演奏や楽譜研究なども含む。)リストの編曲は音楽愛好家による演奏の可能性をほとんど、あるいはまったく考慮しない高度な演奏技能を要求するものだが、リストは自身が手がけたオペラ編曲を、世紀前半は自らの演奏によって、また世紀後半は弟子たちによる演奏および楽譜出版という手段を通して多くの人々に伝え続けていっていた。リストの演奏家としてのキャリアのなかで、オペラ編曲がレパートリーの拡大という以外に、音楽史上、音楽文化史上、どのような効果を生み出したのか。指揮者としての活動において、オペラ編曲にはどのような意義があっただろうか。またピアノ教育の現場において、これらの編曲が果たした役割は何か。さらには、当時の音楽社会において新作オペラとピアノ用編曲が並存した意味合い、原曲を自由にアレンジする美的価値などにも目を向けながら、音楽表現のさらなる拡大を求め続けたリストの意図と功績を考察した。 これらについては「音楽文化史におけるリストのオペラ編曲――創作と演奏表現の芸術ジャンルとして――」のタイトルの下にまとめ、共著書『音楽表現学のフィールド2(仮)』(音楽表現学会編)として平成28年度秋に出版される予定である。 またウィーン原典版の校訂楽譜『リスト 超絶技巧練習曲』の翻訳を手がけたことで、リストのピアノ曲とオペラ編曲との関連性(とりわけピアノの楽器のオーケストラ化、3段譜の使用など)について検証した。 そしてリスト=ワーグナーの個々のオペラ編曲5曲については『ピティナ・ピアノ曲事典』(web版)に楽曲の総説を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は勤務校の移動により研究への取りかかりが遅れたが、今年度は海外図書館で19世紀の編曲出版譜を実際に閲覧したり、個別のオペラ編曲の分析を行ったりと、ほぼ計画通りに進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、19世紀後半におけるリストのオペラ編曲の音楽的、美的、社会文化史的分析を進める。また最終年度の総括として、19世紀全体、さらには音楽史全体を見渡して、リストのオペラ編曲の位置付け、音楽史的意義などを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2-3月の時期に海外での楽譜調査を予定していたが、学内での担当委員会業務(入試関連)のため一定期間の海外渡航が難しくななり、残金が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の残金については、来年度夏季に、ベルリンおよびウィーンにて19世紀に出版されたリストのオペラ編曲譜の調査を行う費用に充当する。
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備考 |
上記5点すべて『ピティナ・ピアノ曲事典』(全日本ピアノ指導者協会編)に執筆したリストのオペラ編曲の楽曲解説項目
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