本研究はフランツ・リスト(1811-86)が生涯を通して取り組んだ70曲におよぶオペラ編曲を網羅的に取り上げ、以下の2点を主たる成果として得た。第一に、これまで明快に整理されてこなかった「アレンジメント」、「トランスクリプション」、「ピアノ・スコア」といったリスト自身が編曲に付与した独自名称の区別と各名称の意味合いを、リストの言説および編曲手法の分析から明らかにした。そして第二に、オペラ編曲のジャンルがリストの創作人生、編曲の歴史において、音楽的そして美的にどのような意味と意義を持つのか、さらには19世紀の音楽生活においてどのような役割を果たしていたのかを明らかにした。
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