研究課題
基盤研究(C)
律管とは、先秦中国で考案され、奈良時代に日本へ渡来した調律具の一種である。本研究は、日本の律管の現存状況とその背景を調査し、国内の5つの博物館等が所蔵する計7点の律管の寸法を計測した。その結果、(1) 7点の律管の寸法はおおむね似通っており、各々の音高が著しく異なるとは考えにくいこと、(2) 三分損益法に則って作られたかどうかは疑問であることが明らかとなった。日本の律管とその思想的背景である楽律学との関係については、今後の研究が必要である。
音楽学
本研究の学術的意義は、律管という側面から、日本の楽律学の再発見と再評価に貢献したことである。楽律学とは、中国伝統音楽における広義の音楽理論を指し、清代以前には、主に雅楽に関わる理論として発展した。中国では、雅楽の伝承が途絶えた一方で、楽律学は今日なお継承されているのに対し、日本では、雅楽が伝承されている一方で、楽律学の存在は忘却されてきた。しかし、近年、音楽学や中国哲学の一部において、日本の楽律学の再評価が進みつつあり、本研究はその一助と考えている。