28年度の研究調査は4回行った。1回目は2017年8月12日~15日、長崎県福江島や嵯峨島で伝承されている念仏踊り(オネオンデー、オーモンデー、チャンココ)における裏声の調査を行なった。八重山(26年度)や奄美(27年度)での裏声についての調査に引き続き、九州の西海岸でお盆で演じられている念仏踊りにおける裏声の使い方についてインタビューを行い、現地録音やビデオ撮影を行なった。そのために三脚や録音器具を購入した。2回目の調査は11月21日~26日、沖縄本島で活躍している歌三線の演奏者との聞き取り調査を行い、3年間の調査で得た情報をフィードバックし、それぞれのインフォーマントからコメントをいただいた。また、同調査で西洋声楽の研究者と交流し、身体と発声法についての意見交換を行なった。1月、2月の調査は沖縄本島で行われている歌三線の稽古場や試験を調査し、古典音楽の発声法の指導法や、評価方法を観察し、聞き取り調査を行なった。またこれらの調査では県立図書館、沖縄県立芸術大学附属図書館に保管されている資料(主に組踊の資料、演奏会のプログラム、県内に出版された芸術雑誌など)を閲覧した。 学会発表は国際学会で2回発表した。4月の発表は英国のBritish Forum for Ethnomusicologyの大会で、今まで組踊の唱えについての発表をし、会場から重要なコメントをいただいた。また、同大会でイギリス、アメリカなどの研究者と交流し、共同出版を企画した(現在は出版社と交渉中)。2回目の発表は8月、台北で開催されたICTM東アジア音楽研究会のシンポジウムにおいて発表した。発表内容はその後「Journal of Interdisciplinary Voice Studies」に提出し、査読を通った(2017年7月に出版される予定)。
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