研究課題
期間を延長して行なわれた平成29年度の研究は,メーイにおいて,古代音楽理論解釈とアリストテレース『詩学』解釈とがいかに融合されているかの検討の最終段階であった.ここでの成果は,2017年初頭に成城大学大学院の紀要『美学美術史論集』に日本語で発表した「話す人を歌で摸倣する:メーイの古代悲劇像とペーリのレチタティーヴォ理論」の改訂版の英訳に集約される.その内容は次のように要約される.現存最古のオペラ『エウリディーチェ』(1600年)の作曲者ヤーコポ・ペーリは,同作品への序文の中で,彼が全面音楽劇と理解した古代悲劇の復興のため,語りの連続的音高変化と歌の音程的音高変化との「中間物」として,新しい独唱様式(のちにレチタティーヴォと呼ばれる)を開発したと述べている.この問題についての唯一の先行研究者であるC.V.パリスカは,古代悲劇が全面音楽劇であったという理解とともに,この「中間物」の考えについても,メーイを源とするという考えを表明しているが,本論文における手書き未刊を含むメーイの関連全著述の綿密な検討の結果,それを証拠立てる材料はなく,「中間物」の観念はむしろ遠くボエーティウスに由来すると考えられることが明らかになった.その内容を私が英訳し,ハーヴァード大学のDr. Sujay Pandit氏の英文校閲を受けた.数度にわたる彼とのやりとりを経て,英文表現の微妙な違いについて私の理解が深まり,今後の英語論文執筆にとっても有益であった.この論文は音楽学または美学の国際学術誌への投稿を予定している.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 1件)
e-book Proceedings of ICA 2016, Seoul National University
巻: 1 ページ: 469-473
成城文芸
巻: 240 ページ: 141-159