メーイ(Girolamo Mei)は,西洋世界でそれまで不思議に交わることのなかった古代音楽理論の伝統とアリストテレース『詩学』の伝統とを初めて結び合わせた.すなわち,彼は独自の解釈によるギリシャ旋法理論を,『詩学』に見られる古代悲劇の強い情動喚起作用の説明手段とすることで,両者の融合を成し遂げた.その際,厳密な『詩学』解釈から導き出された彼の「ギリシャ悲劇は全篇歌われた」とする解釈が両者の橋渡しとなった.一連の解釈を経て,彼は当時一般的であった制作論とは趣を異にする効果の美学に到達することができた.
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