研究課題/領域番号 |
26370111
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
小坂 直敏 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (20366389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音の音 / 階層的な音合成 / レクチャーコンサート / オーケストラ / 構造的音色 |
研究実績の概要 |
今期は、26年度の研究計画通りの研究の遂行はできなかった。3年計画の最終年度でレクチャーコンサートの実施があり、そこに本研究の考え方の啓蒙を行うことが謳ってあるが、昨年度12月1日に東京藝術劇場大ホールにおいて、大井剛史指揮、東京交響楽団演奏によりオーケストラ公演を行い、その中で「音の音」というタイトルで作品を制作した。聴衆の数は901人であった。本来は研究の成果を盛り込む形でのコンサートが最も望ましいが、大きな編成の作品発表は必ずしも研究代表者の望む年度での発表ができず、研究初年度で、その番が回ってきた。そこで、26年度は、研究のデータ収集の側面と、「音の音」という概念を用いてのオーケストラ作品の制作とその公演に研究実施内容を集約させた。 具体的には、1)本研究の基本的考え方である、「音の音」という概念の説明による広報(啓蒙)活動の他、「音の音」の具体化として、オーケストラ音で音声を発声する、という構想の楽曲制作を行った。これを器楽だけで実施するのは、本来何度も練習が必要であるが、リハーサル回数が2回と少なく、現実的ではないため、2)本作品の一部を二次利用し、別作品で「音の音」の構想を実現するため、本作品はその素材取り(データ主集)とした。 一方3)本作品では、いろは歌を研究代表者が朗読し、これを音響分析(ピッチ分析)し、これに基づき旋律を確定した。次にこれにダイアトニックであり、かつ、新たな和声付けを行い主題とした。この主題に基づき変奏を行うことにより、楽曲として創作し、オーケストラ作品として発表した。このときは、知覚的に「音の音」という階層構造になっていないが、プログラムに上記の解説を載せたところ、「いろは歌」が聞こえてくるようだ、との感想も得られた。 今年度以降は本作品の収録音を元に実施的に「音の音」、すなわち、知覚的に階層的な音響仕様、となるよう研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で記載したとおり、オーケストラ公演の決定がなされ、本研究との関係では3年計画の中でその実施順序を入れ替え、またデータ収録内容をフルートや自然音からまずオーケストラサウンドと入れ替えた。この変更により、制作部分における重みが増し、結果として研究の進行がやや遅れた、 しかし、大局的には、実施の順序を入れ替えたことと、データ収集はできたため、本年度にその遅れを取り戻すべく、合成音方式を考案する。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、1)音データ収集と、2)階層的音の構造(音の音)の知覚的分析、3)基準音色を用いた合成音方式の提案のうち、3)を最も重点的に行うことを目標とする。また、1)2)は3を進めるにあたり、その必要に応じて収集するものとする。 具体的には、a)昨年度収集したオーケストラ音データをもとにして、オーケストラ音の印象を保ちながら、音声の情報(音韻情報)を付与する方法の検討、と逆に b)ひとつの音を構造的音色、特に階層的音色で表現するため、ある単音(例えば音声など)を与えたとき、これをフルートの音で表現する方法を考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はオーケストラ公演を行い、これが当該年度としては計画外の出費であったため、前倒しをした。前倒し申請時点では、正確な公演費用がはじけず、安全を見て、2度の前倒しをしないような金額を想定した。その結果、費用を多少余分に見積もったため、この残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この残金は、当初昨年度に計画していたことでできなかった項目、すなわち、データ収集のための謝金や、心理実験のための謝金に当てる予定である。
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