研究課題
本課題では、日本本土、沖縄、中国、台湾、韓国の「少女歌劇」系芸態を対象に、東アジアの娯楽市場において、どのように自身の伝統と「西洋」の折り合いをつけて「近代」を実体化したのか、「他」による「自」の再構築の姿を、共有する属性及び個々の「伝統」との関係の多様性から検討するとともに、基礎資料の収集・作成を行った。最終年度は、前二年間の各地の事例研究、二国・二地域比較、多国・多地域比較検討などの研究活動を踏まえて研究活動を展開、東アジアの娯楽市場における演劇の日本化が近代化と同等の意味をもち得たのは、ここでの「日本」化が「日本を媒介とした西洋」化であったことを確認し、この「日本化」は、日本国内に於て明治政府が目指す「近代国家」としての「(近代)日本」を作るための「(近代)日本化」という側面をもち、内実的には東京を実験場にして実体化させた「東京文化コード」であることを認識するに至った。すなわち、「近代」を実体化する方法論として、東アジア各地(当然日本の各地も対象である)の娯楽市場の近代化とは、従来の「自」文化コードを「東京文化コード」に合わせていく作業としてとらえることができ、それにより、近代の東アジアが有する政治的関係から距離を保ちながら対象とする文化実体としての演劇とその社会を捉え、東アジア文化圏を「近代日本」空間という共通した視座で横断的・包括的に捉えることが可能になる。2016年10月に台湾・台北芸術大学で開催した「東亜大衆戯劇国際学術研討会」において、この認識に基づく研究発表を行い、メンバーで共有、2017年1月立教大学で開催した「『近代日本』空間下の東アジア大衆演劇」国際シンポジウムは、この認識にたって企画したもので、基調講演2本、研究発表11本で研究成果を問い、本課題の最終成果報告として、3月に当該シンポジウムの論文集を刊行した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件) 図書 (4件) 学会・シンポジウム開催 (2件)