本研究は、近代日本の思想および芸術活動において蓄積された文化哲学的・美学的理論を再検討すると同時に、比較思想および間文化性の観点から、それを他の諸文化圏の美学のなかに位置づけようという試みであった。いいかえるとそれは、アジアの近代化・西欧化という歴史的文脈において日本近代の思想形成を相対化し、同時にその埋もれた可能性に光を当てることでもあった。今回の研究は、西田幾多郎の芸術論など、忘れ去られつつある業績を含め、それらを再評価することで、従来にない切口を探ろうと努めた。主要な個別的研究テーマとして集中的にとりくんだのは、創造作用としてのポイエシス、詩作と歴史、美的なものの時間性等の主題である。
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