本研究の概要は以下のようなものである。1940年に開催が計画されながら戦局悪化が原因で実現の機会を逸した紀元2600年記念万国博覧会(以下、紀元2600年万博)について、主に芸術の政治性という観点から考察するため、必要な調査や資料の収集を行う。次いで、紀元2600年万博を国際的な文脈に位置付けるために、同時期に開催が計画されながらやはり戦局悪化のため実現されなかったベルリン万博(1950年)やローマ万博(1942年)についての調査や資料の収集を行い、紀元2600年万博と比較検討する。 3年計画の最終年に当たる今年は、最終の調査を行うと同時に、過去2年間の調査研究を踏まえて、全体のとりまとめに着手することを目標とした。具体的には、暮沢と江藤の両名で2016年9月上旬に中華人民共和国の旧満州地区の調査を行ったほか、2017年3月中旬には暮沢が単独でイタリア及びフランスの調査を行い、現地調査や資料の収集を行った。また暮沢、江藤ともに京都の国際日本文化研究センターにおける研究会への参加など、数度の国内出張を行う一方で、京都在住の研究協力者・鯖江秀樹を東京に招いての研究会を行った。 紀元2600年万博についての先行研究はほとんど存在しない。そうした中にあって、暮沢と江藤は残された資料を詳細に調べることによって、紀元2600年万博の開催計画が当時国内や植民地で開催されていた多くの博覧会と密接に関連していたこと、またそこで予定されていた美術展示や音楽公演が、同時期に開催されていた奉祝のための美術展や音楽公演と密接に関連していたことを明らかにすることができた。 本研究は、暮沢、江藤のほか連携研究者の寺本敬子と研究協力者の鯖江秀樹が発表した論考を加筆訂正の上収録した4人の共著として青弓社より出版される予定であり、2017年度内の出版を目指して、現在その作業を進めている。
|