研究課題/領域番号 |
26370121
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
服部 正 甲南大学, 文学部, 准教授 (40712419)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アウトサイダー・アート / アール・ブリュット / 障がい者アート |
研究実績の概要 |
本年度は、フランス北西部の都市ナントのオルタナティヴ・スペースLe Lieu Uniqueで2017年10月21日から2018年1月7日まで開催された「Komorebi: Art Brut Japonais(木漏れ日―日本のアール・ブリュット)」展の調査を行った。42人の日本の障がいのある作家の作品を「Pop Culture(ポップカルチャー)」「Villes Fantomes(ゴーストタウン)」「Paysages Interieurs et Intimites(内的風景と親密生)」「Structures et Classifications(構造と分類)」の4章に分けて展示したこの展覧会は、図録に記載されたクレジットやテキストから、極めて社会福祉色や政治色の強い企画であること、とりわけ滋賀県での障害者福祉の取組を賞賛する意図が強いものという印象を受ける。一方で展覧会自体は、2010年にパリのアル・サン・ピエールで開催された同種の展覧会と比べてもはるかに洗練されており、美術愛好家に対する訴求力の高いものだった。澤田真一の作品は、典型的な様式の陶芸作品が12点、初期の乗り物をモチーフにした紙製の立体作品が9点展示されていた。 その他、5月15日~27日に開催された第二栗東なかよし作業所で開催された「なかよし生活展 IV」と、12月3日および3月25日に第二栗東なかよし作業所窯場で行われた陶芸作品の窯焚きを調査し、澤田真一の最新作の調査を行うとともに、第二栗東なかよし作業所陶芸指導者の池谷正晴氏、社会福祉法人椎の木会落穂寮理事長の山下陽一氏と面談して聞き取り調査を行ったこと、2月10日~3月4日に徳島県立近代美術館で開催された「生の刻印 アール・ブリュット再考」展を調査し(澤田作品7点)、企画者である同館上席学芸員の吉川神津夫氏に聞き取り調査を行ったことも大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の対象である障がい者の創作活動が東京オリンピック・パラリンピックに向けて想定以上に活発に行われており、資料収集や調査の範囲が予想以上に拡大したことに加えて、招待講演等の成果発表の機会が想定以上に多く、その準備に多くの時間を費やしたため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の取り組みとして、これまでの研究成果を取りまとめ、公表することを目指す。作品イメージの公開については、著作権者の同意が不可欠であり、その点で不確定な要素が含まれるが、収集した文字ベースの情報について、集約と公開の準備を進めていく。合わせて、障がい者の創作物に対する評価の動向については引き続き調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の対象である障がい者の創作活動が東京オリンピック・パラリンピックに向けて想定以上に活発に行われており、資料収集や調査の範囲が予想以上に拡大したことに加えて、招待講演等の成果発表の機会が想定以上に多く、その準備に多くの時間を費やしたことにより、研究の進捗が遅れたため、1年間の研究延長を行ったため。 本年度は、研究の最終年度として成果の取りまとめを行う。
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