研究課題/領域番号 |
26370122
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
上羽 陽子 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (10510406)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 民族芸術学 / 手工芸文化 / 染織研究 / インド / 伝統技術 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代インドにおける染織技術に焦点をあて、伝統的技術がどのように継承され現代的要素がいかに組み込まれているかをフィールドワークによって解明することを目的とする。 本年度は、インド、アフマダバードの女神儀礼用染色布の生産現場およびデリーにてインド政府によるクラフトマーケットおよびローカルマーケットでの儀礼用染織布の販売状況について聞き取り調査を行った。生産者コミュニティにおいては、男性が中心となって儀礼布の生産をおこなっているが、女性と子どもが手間のかかる彩色や媒染剤の塗布などの仕事に従事していることから、コミュニティ内の役割分担を明らかにした。加えて、道具のイノベーションや新しい染料の導入など生産から販売への戦略を調査することができた。デリーにおいては、ローカルな文脈で流通している儀礼用布が外国人や都市中間層に向けて意匠や大きさなどを変えて販売されていることが明らかになった。 また、イギリスの大英図書館にて以下の2点を中心に所蔵の文献渉猟を実施した。 一つは、植民地時代のイギリス・インド省資料における女神儀礼用の染織布に関するもの、もう一つは、19世紀後半のインド村落実態調査の報告書に関するものである。現在、現地調査を進めている複数の地域における生業や生産物の19世紀後半の状態が明らかとなり、貴重な基礎的資料の収集ができた。 成果の公開については、『意匠学会大会』等において、研究発表することで本研究をより地域的・理論的視点から検討しなおすことができた。さらに、「『見方』を開発――インドの染織資料が見えてくる」と題し、インドの染織布の社会的・文化的背景を学校教育において理解を促すための論考を発表するとともに、『学校と博物館でつくる国際理解教育のワークショップ』(国立民族学博物館調査報告(SER)138号)を編集し、刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から本年度まで現地調査および資料収集によって基礎的資料の収集は順調に進んでいる。これらの調査をもとにして、意匠学会大会等において成果発表を実施し、研究テーマに対しての議論を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
四年目にあたる来年度は、これまで得た基礎的データの整理をすすめるとともに、研究大会等で発表した際の他の研究者との情報交換や意見交換をもとにさらなる議論の深化を進める。『IUAES』や『意匠学会』などにて研究発表をおこない、それらを取りまとめて論文執筆を成果発表としておこなう。
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