①平成29年度の研究実績。(1)ラファエル前派兄弟団の画家D. G. ロセッティに関する論文「肉をまとう魂ーーD. G. ロセッティが描いた<手>について」を出版した(『イギリス美術叢書II フィジカルとソーシャルーーウィリアム・ホガースからエプスタインへ』に所収、平成29年7月)。(2)ラファエル前派兄弟団と「古代人たち」との個人的な関係と芸術上の連関が、ロセッティが出版に尽力したブレイク伝をめぐって生起したことを、論文「「古代人たち」からラファエル前派、そしてD. G. ロセッティへーーA. ギルクリスト『ウィリアム・ブレイクの生涯』を媒介として」において明らかにした(『論叢 現代語・現代文化』[筑波大学人文社会科学研究科現代語・現代文化専攻]19号に掲載、平成30年2月)。研究課題として挙げた芸術家グループ「エトラスカンズ」については、イギリスの図書館・美術館等における調査研究の成果を、現在、論文としてまとめている。ロセッティの芸術に関する英文による著書も執筆中である。(3)平成30年2月12日より22日までイギリスのレディング大学名誉教授であり現在オックスフォード大学ケロッグ・カレッジのVisiting FellowであるBarrie Bullen氏を招聘し、本研究課題に関わる講演会を、筑波大学、日本女子大学、中央大学駿河台記念館で開催し、国際共同研究の端緒を開いた。
②補助事業期間全体の研究実績。芸術家グループ「古代人たち」「ラファエル前派兄弟団」「エトラスカンズ」の各々の恊働的実践のあり方と集団間の繋がりを詳らかにすることにより、芸術家個人の制作に焦点を当ててきた従来の美術史とは異なった視点からイギリス19世紀の芸術家の創作活動を明らかにした。さらに彼らが創作の場としたケント州の村ショーラム、ロンドン、ローマがもつ場の力と芸術生産との密接な関係を示した。
|