平成28年度は、前年度までに整理した英語原文をもとにして、矢代幸雄・バーナード・ベレンソンの往復書簡の邦訳版刊行に向け、全書簡の和訳を実施し、予定通り完了した。また、書簡中に登場する多数の歴史的人物等につき調査を進め、書簡本文に対する訳註の作成を開始した。この作業は平成28年度中に完了することはできなかったが、書籍形態での刊行を目指して継続していく。以上により、当初の研究目的である往復書簡の邦訳出版の準備をおおよそ整えることができた。 調査事項としては、神奈川県立近代美術館に寄託される矢代幸雄宛書簡類のうち、ジョージ・サンソム、ラングドン・ウォーナー、ケネス・クラーク書簡について調査を行ない、また、ロサンジェルスのゲッティ・リサーチセンターに所蔵される矢代幸雄・ジョゼフ・デュヴィーン往復書簡の調査を行なった。また、バーナード・ベレンソンの作品鑑定の手法に関する調査として、初期の著作『美術作品鑑識の基礎』をとりあげて、詳細な検討を行なった。 刊行物としては、研究協力者の平井彩可による「ボッティチェリを語る日本人評論家―-『タイムズ・リテラリー・サプルメント』、1925年11月12日号より」(矢代幸雄著『サンドロ・ボッティチェリ』1925年に対する重要な書評)の邦訳が刊行された。 往復書簡の最終的な邦訳版刊行に向け、都内の出版社と合意することができた。2018年度内の刊行を目指して、現在翻訳文の推敲を継続している。
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