研究課題/領域番号 |
26370129
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
ユウ ヨンゴ 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (70401510)
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研究分担者 |
荒井 経 東京藝術大学, その他の研究科, 准教授 (60361739)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高麗仏画 / 国際研究者交流 / 国際情報共有 |
研究実績の概要 |
本研究は、高麗仏画というもっとも複雑で重層的な彩色技法によって描かれた文化財の技法研究ならびにその成果を反映させた複製画制作である。特に26年度は研究対象作品として東京芸術大学蔵「阿弥陀八大菩薩像」を取り上げ、調査研究を進めてきた。絹を基底材とする作品の複製画制作については、絹の織目の粗密や糸の太さ等の問題から、印刷の際インクが絹目から抜け落ち、高精細な画像の印刷が困難を極めていた。しかし、支持体である絵絹の裏面に目止めのための和紙を接着させ、更に顔料を塗布するなど下地への工夫を凝らすことで、粗い絹目であっても、インクが定着しやすい状態の開発ができつつあった。しかしその質感、量感、空気感、臨場感についてはまだ開発の余地がある状態で、まずはその点について研究者間の情報の共有を図るべく、会議を開催することとなり、5月に訪韓した。会議で決定したことは「支持体の加工方法については、絵肌の微妙な凹凸の差を出す工夫が必要である」「表装の形式については古い時代、例えば朝鮮時代初期(16世紀)のものを参考にする」であった。その後、様々な絹目での印刷や、地塗りの絵具の粒子をかえたサンプル、絵肌の凹凸をだすためのシルクスクリーン技術開発などを行っていった。研究の末、シルクスクリーンの版を2種作製し、 1、は背景部分と図像部分に凹凸の差が出るようシルクスクリーン加工を施し、その上に芸大本の高精細画像を印刷を行う 2、は更に細部の凹凸、具体的には補絹箇所や墨など厚みの感じられないところは凹むようシルクスクリーン加工を施し、その上に高精細画像を印刷 3、は凹凸が一切ないよう(シルクスクリーン技術を取り入れない)加工された絹に高精細画像の印刷 を行った。その結果1、2とも原本の雰囲気に近いものとの結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、 根津美術館所蔵の「阿弥陀如来図」「地蔵菩薩図」、東京 浅草寺所蔵の「水月観音図」、京都 大徳寺所蔵の「水月観音図」、京都 泉屋博古館の「水月観音図」、京都 玉林院所蔵の「阿弥陀仏図」、韓国 サムスン美術館Leeum所蔵の「水月観音図」を調査対象作品として取り上げ、赤外線写真撮影、蛍光X線分析調査や顕微鏡写真撮影、高精細画像撮影を行うことを順次計画していたが、まずは芸大本の細部にまでわたる調査および複製画制作に重点を置くことが先決であると考えた。 シルクスクリーン技術を複製画製作に取り入れたことにより、正確な位置に印刷を行うことが非常に難しく、細心の注意を払いながらの作業となった。しかし、絵肌の凹凸という面では画期的に原本の雰囲気を捉えることができ、質感、量感など、一定の効果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、シルクスクリーン技術を取り入れた1,2の複製画に補彩を施し、原本との比較調査を行う。その際に韓国から研究協力者2名を招へいし、再度検討会を行い、より臨場感のある複製画製作に結び付ける予定である。また最新の写真撮影技術も導入しながら進めていく。まずは1点の作品について徹底的に追及する方向で進めていく予定である。 その後、根津美術館所蔵の「阿弥陀如来図」「地蔵菩薩図」、韓国 サムスン美術館Leeum所蔵の「水月観音図」などの研究に取り掛かることができればと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を始めると、思いがけず試作のための物品代(特にインク代や絹代)の支出が多いことがわかった。反対に旅費が当初の予定より発生しておらず、トータルとして次年度に使用額が生じることとなった。今年度にその分を使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
最終的には研究が滞りなく進むよう、支出のバランスを図りながら進めていく予定である。今年度の外国旅費(訪韓)は5名で行う予定であり、東京→ソウル 4泊5日 5人×150,000で 750,000円。韓国からの2名の研究協力者招へいで、ソウル→東京 4泊5日 2人×150,000で300,000円。トータルで1,050,000円の使用予定となる。
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