本研究は、大名と大坂豪商の「文雅の交」に関して、1.食野家一統と八州軒に関する研究、2.柳沢伊信と西村孟清の交流に関する研究、3.「楽翁画帖」(平野美術館)の調査研究、という具体的な3つの事例を中心に検証するものである。 28年度の研究実績は以下のとおりである。 1に関しては、前年度に引き続き食野家一統ならびに八州軒に関する文献調査を行い、関連資料の収集、整理に努め、主要なものについてのデータ整理を完了した。また、食野一統の「文雅」を中心とした事跡に関する論考「文雅の家系としての食野一統―唐金興隆、和田隆侯を中心に」を執筆した(平成30年公刊予定)。 2に関しては、前年度までに引き続き柳沢伊信の日記のうち公刊されている『宴遊日記』『松鶴日記』等から美術関係、西村孟清との交友関係等に関する資料の抽出を行うとともに、未公刊の日記のほか、関連資料に関してデータベース化を実施した。また、西村孟清が主人であった商家「袴屋仁右衛門」に関する文献調査を実施した。併せて、西村孟清と親交があった頼春水らが編纂した『与楽園叢書』(広島市立中央図書館浅野文庫)の調査を前年度に引き続き実施し、頼春水ら広島の儒者・文人と大坂の豪商・文人らとの交流を伝える文献資料の収集、整理を行った。 3に関しては、前年度までに実施した「楽翁画帖」に関する調査の中で、伝歴不明であった画人についての調査を引き続き実施した。また、松平定信が「楽翁画帖」と並行して全国各地の儒者・文人の書跡を蒐集したと推定される作品「楽翁法帖」(平野美術館)の作品調査を実施し、その内容や「楽翁画帖」等との関係に関する論考の執筆を開始した(平成29年度発表予定)。
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