本研究では、とりわけプッサンの《ダフネに恋するアポロ》(1664年、ルーヴル美術館)について、中景の横臥像が準備素描の分析から「バットスを石に変えるメルクリウス」の脈略から解釈できる可能性が存すること、作品の典拠の一つとしてレオーネ・エブレオの『愛の対話』(1535)におけるアポロとダフネの物語の自然哲学的な解釈が注目されるべきこと等を明らかにできた。その結果、自然の基本的要素の循環のテーマに月桂樹と関係した芸術家の普及の名声のテーマが織り込まれることで辞世の作にふさわしい構想から制作されたことが明らかになった。
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