本研究は、北方ヨーロッパの画家たちによって16世紀後半から17世紀にかけて制作された特殊絵画の包括的な研究を行うものである。金属板油彩画および石板油彩画が生み出された歴史的背景を検証し、それらが当初イタリアで制作され、その後、イタリア在住の北方画家たちによって北方ヨーロッパにもたらされたことを明らかにした。加えて、こうした特殊絵画に好まれた主題傾向や、支持体が作品に与えた象徴的意味、特殊絵画の展示形態などについて解明した。こうした成果に基づき、絵画形態の多様化は、画家たちが新奇で希少な絵画作品を産み出すために様々な素材を実験したマニエリスム美術を特徴づける現象であると結論づけたのである。
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