今日の奈良時代の解釈には根源的なずれがある。本研究の目的において以下4点を考察対象として特記しておいた。1)古密教とは何か、2)8世紀の神と仏の関係の実態と言葉の妥当性、3)地方性:畿内以外の地方、特に九州の意義、4)奈良時代初期、東大寺大仏殿建立以前の仏像と寺院。本研究では、これらのずれの原因を理解し、 また現存遺物を元にずれを解消していくための背景を明示した。最終的に、8世紀の仏像仏画の特徴を理解するためには、仏教信仰や神のあり方の当時の受け止められ方に関する概念を修正すべきであり、密教という言葉自体が存在していないという理由から古密教という言葉を使うべきではないという2点の結論を得た。
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