【概要】本研究では18世紀前半のコレクションにおける17世紀オランダ絵画の受容を考察の対象とする。平成28年度は最終年であるため、これまでの研究成果を統括し、発表するために必要な補足的な調査、そして論文執筆、口頭発表に取り組んだ。9月にはオランダ(9/7-9/18)にて絵画作品・資料・文献のさらなる調査を実施した。国立美術史研究所(ハーグ)、国立美術館トウェンテ(エンスヘデー)、国立美術館とその版画室・図書室(アムステルダム)等において文献・資料の収集、作品調査を行った。 【成果・発表・出版物】これまでの研究において、(平成27年度の実施報告書に記載されているように)2つのテーマから調査に取り組んできた結果、それぞれ複数の研究成果を発表することが可能となった。 (1)18世紀コレクターの好む17世紀風俗画の題材自体が、どのように選ばれ、描かれ、評価されたのかに関する考察:17世紀のハブリエル・メツーの風俗画「新生児の訪問」の意味解釈に関する論文を発表、また、17世紀の画家レンブラントとその弟子ヘリット・ダウの作品が18世紀において対作品として鑑賞された事例について、18世紀コレクターの趣味の分析をもとに考察を行った。 (2)18世紀パリの絵画市場において人気を博したオランダ画家とその作品をプロモートした画商の活動に関する考察:とりわけパリ市場におけるアドリアン・ファン・オスターデの農民画の高い人気の理由について、18世紀パリの競売目録を分析を通じて浮き彫りにし、2016年12月、オランダのハーグで開催されたオランダ風俗画の国際シンポジウムにて口頭発表することができた。 【講演会の開催】オランダ絵画における「オランダ性」とは何かというテーマを考察するために、九州大学にて、2017年1月にユトレヒト大学テイス・ウェストステイン教授の講演会を開催した。
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