中国の涅槃像を検討すると、初期の涅槃像は仰向けに表現されて、6世紀末頃になると右脇を下にした姿に変化する。釈迦の涅槃に入る姿については、初期経典に右脇を下にした姿で描写されており、インドでも釈迦の涅槃像は右脇を下にした表現が行われてきた。本研究では①中国では、なぜ経典の記載とは違う涅槃像を表現したのか。②それがなぜ経典記載通りの姿になったのかを考察した。 ①は中国に涅槃という概念が入ってきた際に、中国の人々はそれを「涅槃」ではなく「死」として捉え、通常の人間の死の姿として表現した。②は「涅槃」を「深い悟り」と正しく解釈したのが6世紀末頃で、それが右脇を下にした涅槃像を誕生させたと推測できる。
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