本研究は、欧州における在外日本染織品の所在を総括的に検証するものである。そのため、西欧各地にある日本染織品を発掘し、それらが、いつ、どこに、どのような経緯で入ったかを調査し、日本染織品の地域的な広がりと共に、その影響が絵画、装飾芸術など、より広範な領域へ及んでいたことを検証した。それによって、ジャポニスム研究を深化させるものとなった。 また、ジャポニスム期に西欧地域に流失した日本染織品は、現今、その多くが美術館等の専門施設で保管されているが、西欧の小中規模の美術館は日本部門の専門研究者を持たず、また染織品固有の保管の難しさなどから、日本染織品へのアプローチが拒まれているのが実状である。本調査結果を調査対象館へフィードバックすることによって、現今低迷する海外の日本研究の活性化を促すことになり、さらに、データベース化のための基本情報となった。 最終年度は、前年度までに調査を実施したフランスのパリ装飾芸術美術館(旧モードとテキスタイル美術館)、イギリスのV&A美術館やスコットランド国立博物館、イタリアの国立ヴェネツィア東洋美術館やローマ国立ルイージ・ピゴリーニ先史民族学博物館、オーストリアの応用美術博物館やウイーン世界博物館(旧民族学博物館)、ポーランドの日本美術技術博物館、ドイツのハンブルク美術工芸博物館などに現存する日本染織品の調査結果に基づき、それらの旧蔵者について追補調査を実施した。 調査結果は『ヨーロッパに眠る「きもの」―ジャポニスムからみた在欧美術館調査報告』(東京美術 2017年4月)として、広く一般にも調査結果を公表するために一般書籍として刊行した。また、調査結果は、ジャポニスム学会や服飾美学会などにおいても発表を実施した。
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