研究課題/領域番号 |
26370152
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、 |
研究代表者 |
岩佐 伸一 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 研究員 (70393288)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近世絵画 / 公家 |
研究実績の概要 |
本年度は主に個人に所蔵される公家の絵画および関係する文献を調査した。 調査した作品の主な作者としては、九条尚忠、一条忠香、広幡前豊、大原重成、小倉宜季、岩倉具選、豊岡治資、慈光寺実仲、伏原宣光らを挙げることができる。彼らの家格に着目すれば、九条家や一条家は摂家、広幡家は清華家、大原家や小倉家、岩倉家は羽林家、豊岡家は名家、慈光寺家や伏原家は半家などと家格に関わらず作画を手掛ける当主のいたことを確認した。それらはこれまで調査の対象になった作品ではなく、そのデータや画像など全く記録がなされていなかった作品であり、基礎的なデータが得られたこと自体に意義があると考える。またそれらの作品には、狩野派、土佐派、南蘋派、四条派など多様な表現が見られた。これまでは公家の絵画は墨画による略筆の神像や狩野派風の作品などごく限られた表現による作品が紹介されているにとどまるが、本年度の調査を通じて多様な表現がなされていたことを確認できた点において大いに意義があったと考える。なかでも武家による作画と同じく、江戸時代半ば以降には公家においても南蘋風絵画の影響を受けた作例を実見できたことは、南蘋風絵画の影響がいかに大きかったかを知ることができた。 文献では『文政己丑御遺物帖写』(中京大学名古屋図書館蔵)や『石井行忠卿記』(個人蔵)等を閲覧した。前者は白河藩主松平定信の遺品を配分した記録であり、その中には久世通根らの公家の描いた絵画が含まれており、武家階級にも公家の絵画が受容されていたことが明らかになった。また後者には勅使として関東に下った石井行忠らが江戸城内において狩野派絵師による席画で歓待されたことが記載されており、狩野家の画技を目前にする機会があったことが明らかになった。作例と合わせてこれら文献面からも公家絵画の受容や制作状況の一端を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
江戸時代において作画を手掛けた公家の存在を約100名確認し、かつ複数の作品の確認もできたものの、個々の作品の詳細な分析や作画を手がけた公家が著した日記類の閲覧を通じての作画活動の確認が想定より進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
宮内庁書陵部や京都府立総合資料館に当該資料が複数所蔵されるためそれらの調査を行う。あわせて公家の所領が存在した地域の自治体史を精査し、ゆかりのある地域に該当する資料が残されていないかを確認する。調査を進めるなかで、公家とともに宮廷おいて重きをなした親王や宮家、門跡の手になる作例も確認した。これらも公家の絵画と同じく絵画史においてはこれまでに研究対象となってはおらず、基礎的な研究の必要性を感じた。
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次年度使用額が生じた理由 |
公家が描いた作品には賛が記される作品が複数あり、その賛の解読と意味の解析を専門家に依頼する予定であったが、本年度に調査した作品においては研究代表者自身による解読ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に調査する作例において、難読の賛文を伴う作例があった場合に専門家にその解読を依頼するために使用する。
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