17世紀から18世紀にかけて、オランダ、ドイツ、イギリス、フランス、ベルギー、ポルトガルなど、ヨーロッパに多数の中国の工芸品が流入し、これらの影響を受けた中国風の絵画や工芸品がヨーロッパで制作された。これらはシノワズリ―と呼ばれる流行となっていった。28年度は、大英博物館やギメ美術館、パリ装飾美術館に収蔵される、日本や中国からヨーロッパに輸出された陶磁器及び、シノワズリーの作品の調査を行った。 あわせて、17世紀後半のオランダ風俗画も併せて調査を行った。オランダ風俗画には中国陶磁が描きこまれている作品が多数知られている。ヤン・ファイト、ヤン・ステーン、ヴィルヘルム・カルムなどの絵画作品を調査した。17世紀後半にはまだシノワズリーよりも、デルフトなどで中国陶磁や日本陶磁のデザインを模倣した陶磁器が制作されている。絵画に描かれた陶磁器は、中国陶磁の特徴をよくあらわしているので、オランダの絵画の中の陶磁器はデルフトの陶磁器はすくない。伊万里磁器の描きこまれた絵画作品も認められなかった。 18世紀になって、ドレスデンのアウグスト強王が収集した、中国磁器、日本磁器、マイセン磁器には、収蔵品台帳がつくられ、作品にはヨハネウム番号と呼ばれる記号が高台裏に彫り込まれた。このヨハネウム番号の彫られた伊万里磁器は、日本では重要文化財の柿右衛門鉢(広島県立美術館蔵)など、知られているが、大英博物館やギメ美術館などでも見つけることができた。現在このヨハネウム番号が彫られた作品の全点の調査がドレスデンの国立陶磁美術館で進行中で、2018年には報告書が出される予定である。ドレスデンに収蔵される日本磁器は、中国陶磁がヨーロッパでは主流のなかでの、ジャポネズリの象徴的なコレクションといえる。
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