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2016 年度 実施状況報告書

材質からみた日本彫刻史研究―素材選択の背景の探求と木彫像の年輪年代調査による―

研究課題

研究課題/領域番号 26370154
研究機関公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、

研究代表者

児島 大輔  公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, 大阪市立美術館, 学芸員 (50582376)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード仏教美術 / 木材 / 仏像 / 御衣木
研究実績の概要

木彫仏像の素材である木材は「御衣木(みそぎ)」と呼ばれ、尊ばれてきた。材木を浄化し加持祈祷をおこなうことで樹木が仏像になる準備がなされることになる。この御衣木加持儀礼の痕跡を残すほぼ唯一の作例である滋賀・誓光寺十一面観音菩薩立像をはじめ、御衣木にこだわりのある以下のような木彫仏像の調査を進めた。
奈良時代に制作された塑像の心木を像内に籠めた鞘仏とみることもできる奈良・妙観寺十一面観音像は近世に雨宝童子像・難陀竜王像を脇侍として補作しており、台座蓮肉にも錫杖を突いた痕跡が残ることから、ある時期に長谷寺式十一面観音像に改変されたことが確かである。大和長谷寺の本尊・十一面観音像はその御衣木が観音になるまでに各地で祟りをおこしたと伝える霊木で、妙観寺像が像内に由緒ある古像の心木を籠めていることを踏まえて観音像を長谷寺式に改変したとすれば、像の御衣木に思いを致した特殊な事例ととらえることができる。
奈良・春覚寺地蔵菩薩立像および奈良国立博物館愛染明王坐像は銘により大仏殿の替柱をもって御衣木としたことが知られる。この替柱が焼失した大仏殿の古材なのか、鎌倉再建時の新材の余材を指すのか断定しがたいが、建築部材を御衣木に転用した例として特筆される作例である。同様に、奈良国立博物館釈迦如来立像はカヤ材製の清凉寺式釈迦像だが、銘により元興寺古橋寺金堂の材を御衣木としたことが知られる。元興寺古橋寺なる寺名については明らかにしがたいが、カヤ材が金堂建築部材として用いられていることとあわせて建築部材を御衣木としたことが確かな作例として特筆される。
東京国立博物館釈迦如来立像は像内の銘により御衣木の伐採地が明らかとなる貴重な例であり、本像の調査とともに銘によって明らかとなる伐採地、京都・一切経谷についても現地踏査をおこなった。
これらの調査成果は大阪市立美術館における特別展で公開する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は木彫仏像のうち、その素材である御衣木に特徴のある作例の調査を積み重ねてきており、これらの成果を公表する準備をおこなっている。研究期間の最終年度である2017年度に研究成果報告の一環として勤務する大阪市立美術館において木彫仏像の素材である御衣木をテーマとした特別展を開催することとなった。この展覧会については当初の研究計画では予定していなかったため多少の研究計画の変更が生じた。この展覧会の開催により、当初の予定よりは前倒しで研究成果を発表することとなるが、本研究課題全体の進行には影響を及ぼしておらず、本研究課題の進捗状況についてはおおむね順調に進んでいると評価している。

今後の研究の推進方策

本研究課題の研究成果を社会に還元することを目的として、2017年4月8日から6月4日にかけて木彫仏像の素材である御衣木に注目した特別展を勤務する大阪市立美術館において開催する予定である。特別展に際しては図録を発行し、この図録上で研究成果の一部を発表したい。また、2017年5月にアメリカ・ハーバード大学において開催される予定の東アジアにおける木彫像のシンポジウムにおいても研究成果の一部を発表することを予定している。さらに、これまでに年輪年代測定用の画像の蓄積を活用して年代測定を含む資料評価をおこなうとともに、2017年度は研究計画の最終年度にあたるため、こうした研究成果の集成をおこないたい。

次年度使用額が生じた理由

来年度に研究成果の報告を目的の一つとする特別展を勤務する大阪市立美術館において開催できることとなったため、本年度はその準備作業を含めた特殊な御衣木を用いた木彫仏像の調査を優先し、当初予定していた年輪年代調査等を来年度に延期したため次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

来年度上半期にこれまでの研究成果の報告を兼ねて木彫仏像の素材である御衣木をテーマとした特別展を開催するが、その後に本来予定していた年輪年代調査をおこなうとともに、これまでに蓄積した年輪年代測定用画像を用いた年代測定等の作業をおこない、資料評価をおこなう予定でいる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 「東大寺金銅八角燈籠の制作技法-修理時の記憶と記録の再構成による-」2016

    • 著者名/発表者名
      児島大輔、八坂寿史、梅村哲史、三宮千佳、三船温尚
    • 学会等名
      アジア鋳造技術史学会 2016岡山大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2016-09-04
    • 国際学会
  • [図書] 『重要文化財 宝城坊本堂保存修理工事報告書』2017

    • 著者名/発表者名
      園田誠嗣、児島大輔ほか
    • 総ページ数
      167
    • 出版者
      宝城坊

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公開日: 2018-01-16  

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