本年度は本研究課題の最終年度であり、研究代表者の所属する大阪市立美術館において特別展「木×仏像 飛鳥仏から円空へ」を企画・開催し、研究成果の一端を社会に還元することができた。本展観は日本の木彫仏像の素材に注目し、どのような樹種木材を利用してきたのか、あるいはどのような由緒ある木材を活用してきたのかを紹介することで素材にこだわってきた日本の木彫仏像の歴史の一面に光を当てることを目的とした。本展の準備として70件以上の木彫仏像の調査を行い、展覧会会場では56件の木彫仏像を展示することができた。また、同展開催に伴い展覧会図録『木×仏像』を刊行し、論文「御衣木の文化史」および作品解説を執筆したほか、講演会「御衣木の文化史」等をあわせて開催し研究成果を公表した。さらに、米国・ハーバード大学で開催された研究集会「Asian Images Inside-Out: What Can the Materials and Contents of Statues Tell Us about Religion in China」に招聘され、「MISOGI(御衣木) Wood materials for Buddhist statuary in Japan」と題した研究発表をおこなったほか、吹田市立博物館で開催された特別展「西村公朝 芸術家の素顔」における講演会「樹に祈り木を彫る 木彫仏像の文化誌」でも研究成果の一部を公表した。 さらに、大阪府立近つ飛鳥博物館で開催された特別展「慈雲尊者と高貴寺 いつくしみの書とその教え」における講演会「慈雲尊者と《如法》のかたち 高貴寺伝来の仏教工芸」、および近時刊行予定の『東大寺の新研究』3に「白銀の転生―銀仏の造像と銀器の転用」と題して寄稿し、銀製の仏像・仏具に注目した研究成果の一部を公表している。素材に注目して造形文化の歴史を紐解く作業を今後も継続したい。
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