九州には中国からの渡来彫刻が偏在している。都に至り日本美術の主流に影響を及ぼした渡来彫刻と、これら九州に偏在するものを比較研究することは、日本美術について考える上で大きな意義をもつ。また九州という場のあり方や、異文化が接触する境界での美術のあり方を明らかにすることにもつながる。そのような研究の基盤を形成するため、九州にある明時代以前の彫刻の調査を行い、基礎資料を集積した。とくに、九州西側にのみ40基程度が存在し、南宋から元時代の制作だと考えられ、5躯の尊像が刻まれた薩摩塔については、集中的に調査して重要作例の制作の時空を絞り込んだ。その成果として、5本の論考を収めた報告書を刊行した。
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