本研究では、観相学という知の体系が19世紀の絵物語形式のメディアの成立に与えた影響を解明した。まず、19世紀前半のスイスで、後のストーリー漫画の原型となるような近代的絵物語を刊行したR.テプフェールが観相学を作画に取り入れた背景を解明した。一作品あたり何百回も同じ顔を描くことで物語るメディアの語りのしくみと、17・18世紀ヨーロッパの美術・演劇論・修辞学との関連を探った。とくに、18世紀までの美術・演劇理論や作法書等において、「内面を映し出す顔」と「作法・演技としての顔」という顔表現の二面性への関心が強く見られたことも明らかにした。
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