研究課題
北京、香港など6度の海外出張を行い、現代アートと市民運動について調査を進め、15本の論文や翻訳を行った。また「アイ・ウェイウェイは謝らない」の監督アリソン・クレイマン、亡命漫画家 ラージャオ辣椒 ろくでなし子氏らに講演をお願いした。同時にパスポート返還前後の艾未未をリアルタイムで追いながら考察を深めた。その結果、現代アートが社会改革を進めていく方向性が具体的に明らかとなった。ここから展開して艾未未の作品や行動を、マルセル・デュシャン、ヨーゼフ・ボイス、アンディ・ウォーホルとの比較検討によって、その立ち位置を明らかにしていく段階に入った。2007年ドクメンタ12、アイ・ウェイウェイは1001人の中国人をカッセルに招へいするプロジェクト「童話(おとぎ話)」を行った。この時のインタビューでアイはヨーゼフ・ボイスの7000本の樫の木を植樹するプロジェクトを継承するものではないかと訊かれている。アイは「人類の文化活動のすべては継続であり、公衆の意識を動員する面で「社会彫刻」といえば社会彫刻だが、この言葉が受け入れ難いほどではないに過ぎない」と答えている。さらに行動の痕跡や、人権問題についての行動など、拡張された芸術概念の面でもアイにはボイスを継承する面があるだろう。ボイス的な「まじめさ」とウォーホル的な「からかい」の絶妙なバランスで、作品が成立している。それはアートがアート足り得る点でもあるし、アートをアートとわきまえる境界とも言えそうだ。アイは自分自身を美術史の中に位置づけることで、現代アートを「認識」し、普遍的な課題と対峙する道筋を獲得していったと言っていい。常に地道で詳細な学習を経てから、それを批判的にとらえ、根本から解体したうえで、再構成する。常に批評的態度で歴史、伝統文化や美術史を捉える点では終始一貫していると言えるだろう。
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Web ARTiT, 2017 5 公開予定
巻: 2017 ページ: 01-10
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