研究課題/領域番号 |
26370161
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
平田 昌輝 富山大学, 芸術文化学部, 講師 (60709690)
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研究分担者 |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60443420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 彫刻 / 石彫 / 素材 / 変成岩 / 有文様石 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで彫刻素材に用いられることのほとんどなかった様々な日本の有文様石について、彫刻素材としての可能性を検証するものである。なお、本研究では、「変成岩」など内部に文様をもつ石を総称して「有文様石」と呼ぶ。 平成26年度は、多様な変成岩が分布する高知県から調査を始めた。変成度や、もととなる岩石(原岩)の異なる21の変成岩試料を採取し、標本を作製、画像データ収集と顕微鏡分析を行った。他には富山県、岐阜県、新潟県、三重県、愛知県、静岡県、愛媛県、岡山県、熊本県において調査と岩石採取を行い、82の有文様石の標本を作製し、画像データを収集した。日本列島の主要な地質帯の有文様石の調査を通して、当初は不明であった同種岩石の地域による同異や、具体的な分布状況の概要を把握し、研究の見通しをつけることができた。全国200の有文様石について、今後調査、標本作製、及び分析を行う方針を固めた。また、美的検証に有効な標本を再検討し、3面研磨標本を考案した。変成作用によって形成された文様は方向性をもつが、直交する3つの平面を切削研磨することで、文様の三次元的特徴を観察することができる。加えて、それぞれの有文様石について薄片標本を作製し、文様をなす鉱物を顕微鏡下で同定した。 各地の調査を経て、日本列島は多様な有文様石によって形成されていることを確認した。地質学においては自明の事実ではあるものの、美術分野での研究はほとんどなく、今後、有文様石を表現素材利用する際の基礎資料を提供できるよう、研究を進めていく。 美術作家や先人の有文様石利用の例や、石の捉え方についても調査した。また、有文様石を用いた作品制作を行い、富山県内のギャラリーの企画展覧会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本列島の主要な地質帯について調査、岩石採取、標本作製を行い、調査や標本作製について研究計画の見直しを行った。表現素材利用の検証の際に必要なデータ収集を再検討した。当初は加工障害に関する検証を計画していたが、それ以前に必要なデータとして、顕微鏡分析をおこない、組成鉱物などの内部組成とそれによって明らかとなる情報を収集することとした。 計画の変更はあったものの、当初の計画通りに進む見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
有文様石を彫刻素材利用する際に必要なデータとして、加工障害に関する調査を当初計画していたが、有文様石の鉱物組成をより詳細に分析する必要性から、顕微鏡観察を重視する研究計画に変更した。見た目だけでは判別し難い、構成鉱物などの内部組織を明らかにすることで、今後、表現素材利用を検討する際の基礎資料とする。 日本列島を形成する石を総覧できるだけの調査として、研究期間全体で200の有文様石について調査・試料採取・標本作製・分析を行う。当初は47都道府県を網羅することを計画したが、地質区分毎に絞り込んだ調査を行い、かわって対象とする岩石の範囲を広げ、標本とデータ収集を充実させることとした。変成岩を中心に、火山岩や堆積岩など、様々な有文様石を対象としていく。 また、有文様石の特性を生かした作品を検討し、制作、発表する。 有文様石の表現素材利用の基礎資料を美術や表現にかかわる人に提供できるよう、研究成果をまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の見直しにより、当初計画していた額から経費に変更があった。
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次年度使用額の使用計画 |
標本作製に必要な物品費や、協力学生の謝金に充てる。
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