本年度は、学会で1回口頭発表を行い、学術論文を2本発表した。 具体的には、2016年7月の日本演劇学会において、クレイグの近松受容に関する学会発表を行い、モダニズムの人形劇ルネサンスにおいて、日本の文楽および、東西の文化接触が果たした役割について指摘した。特に、クレイグの『英訳近松傑作集』の書評の分析を通して、クレイグの近松受容について報告した。 この発表の一部は、「エドワード・ゴードン・クレイグの近松論」として、クレイグの有名な評論「俳優と超マリオネット」と比較しつつ論じ、クレイグの文楽理解が、クレイグ初期の概念である「超マリオネット」を下敷きにしていることを明らかにした。本論文は、日本演劇学会の学会誌『演劇学論集』に投稿し、掲載が決定している。(現在印刷中) また、エドワード・ゴードン・クレイグと坪内士行の間で交わされた未公開の英文書簡については、「坪内士行のエドワード・ゴードン・クレイグ宛未公開書簡―翻訳と原文」として、 名古屋大学国際言語文化研究科発行の『言語文化論集』に、翻訳および脚注をつけて公開した。この書簡は、すでに発表済みの「坪内士行とエドワード・ゴードン・クレイグ―未公開書簡に見る東西演劇の文化接触」(『演劇学論集』62号掲載)の基礎資料であり、これによって、演劇の東西交流の知られざる一面が明らかになったと考えている。 さらに、マールバッハのドイツ文学資料館において資料調査を行い、貴重な資料を収集することができた。
|