研究課題/領域番号 |
26370169
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
大久保 博樹 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30458541)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 効果音 / 映像音響 / デジタルアーカイブ / 効果音ライブラリィ / マルチモーダル |
研究実績の概要 |
本研究は、映像作品における音響効果の最適化要件を、視聴者反応の観点から実証的に解明することを目的とする。本年度は、音響効果技師が制作した各種効果音と擬音制作用小道具の保全、擬音と比較するための汎用的に使用される効果音ライブラリィの選定、デジタル音響の加工に使用されるDAW等のソフトウエアとハードウェア環境を整えることを目標として研究を進めた。 (1) 音響効果技師の南二郎が制作した効果音のアナログ音源の全てをデジタル化し終えた。これは、株式会社サウンドマンによる多大な研究協力によって、6mmテープなど一部特殊となっているメディア類に記録されたアナログ音源をもあますことなく保全することができた。こうして、遺されたすべての音源は、288タイトルのオーディオCDとし、取り込みのソフトウェアのプロジェクトファイルを収録したDVDとのセットとしてラベリングを済ませ、ライブラリィ化した。これにより、多様なメディアに記録されていたすべての擬音等を特殊な機器類を必要とすることなくその音源にアクセス可能とした。 (2) 南二郎のご遺族から寄託された擬音制作用小道具類の基本データをすべて記録した。すべてラベリング、採寸・計量の上、各小道具を高品質のデジタル静止画に多角的に収めた。 (3) 映画や放送局で使用される効果音ライブラリィは、品質と実績で定評のある汎用ライブラリィを選択した。これは擬音と汎用的なライブラリィ効果音とを用いた実証実験の際に欠かすことができない資料であるため、これらを長年扱う専門の関係者からの意見をもとに選択した。 今年度の実績は、研究目的である視聴者に最も影響を与える効果音の要件の探求に向けた実証実験に必要不可欠な基本資料であり、なおかつ、メディア関係機関において看過されたり散逸したりしてきた擬音制作用の小道具類や貴重な音源の保全に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実施計画における音源・小道具類の保全とデジタル化は計画通りに進んだ。また、実証実験に向けた擬音との比較対照となる汎用的な効果音ライブラリィも最適と判断できる品質と内容のデータを選択・入手できた。これは研究協力者である株式会社サウンドマンや効果音を長年扱ってきた関係者の多大なる協力もあり、達成することが可能となった。 音源に関する基本作業が順調だった一方で、南二郎による擬音制作の記録映像や効果音に関係する映像資料の整理は未着手となった。これは、DVテープ、DVD、VHSに保存された映像資料が50時間に及ぶこと、VHS等オリジナルの映像を再生する機器類の選定やキャプチャー方法、取り込みの際の映像規格の検討などから慎重に取り組んだことから時間的に困難であったことが主たる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
前半では、映像資料の整理と保全に取り組み、擬音・効果音制作に関係するデジタル・オンリーの一次資料(デジタルアーカイブ)を構築する。 後半では、研究目的から、実証実験用の映像作品の企画・脚本・撮影・演出に関する計画を詳細化して作品制作に取り組む。これを軸として映像につける効果音の選定も行う。これにより実証実験を実施できるように取り組む。 課題としては映像作品のスタッフやキャストの選定に時間がかかる可能性もあることから、研究計画全体に遅れが生ずる懸念も考えられる点が挙げられる。これはスケジュールの前倒しを前提として、適宜、関係情報の迅速な取得と調整によって回避していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
動画の資料の整理とデジタル化の環境整備において、一部の再生用機器類やソフトウェアの選定、映像の規格の検討等に慎重を期したため、当初の計画より時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
入手しにくくなった再生機器などの再検討に区切りをつけ、平成27年度の使用額と併せて当初の計画を進めていく。
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