研究課題/領域番号 |
26370170
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
譲原 晶子 千葉商科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80283224)
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研究分担者 |
奥 香織 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (30580427) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バレエ・ダクシオン / オペラバレエ / 演劇タブロー / 演劇と弁論術 / メネストリエ / ディドロ / カユザック / ノヴェール |
研究実績の概要 |
平成27年度は主に次の二つ内容を中心に進めた。① 17世紀後半から18世紀前半において「バレエ」と呼ばれた作品(宮廷バレエ、学校バレエ、オペラバレエ、バレエパントマイムなど)について、その題材、構成という観点から作品の在り方を把握しその推移を概観すること。② 18世紀の演劇論において強調された視覚性あるいは「演劇タブロー」の概念を演劇史のより広い文脈から眺めることで、18世紀における西洋舞台芸術の上演の実態をより具体的に把握すること。 ①に関しては、主にバレエ台本の分析を行なった。また、17世紀、18世紀の代表的な舞踊理論書(サン・ユベール、ド・ピュール、メネストリエ、カユザック、ノヴェールらの著作)に記された作品詩学とバレエの台本から読み取れるバレエ作品の実態との関係についても検討を行なった。その研究成果は、拙論「バレエ・ダクシオン成立におけるバレエの演劇性」(『美学』248号)に発表した。 ②については、前年度に引き続き18世紀の演劇を視覚性および弁論術の観点から論じたアンジェリカ・グデンの著作Actio and Persuasion: Dramatic Performance in Eighteenth-Century France の内容を、詳細に研究した。また、タブローを重視したバレエ以外の舞台作品についてもとりあげ、この時代における視覚性を強調した演劇の波及についても広く検討した。その成果の一つとして、モノドラマにおける視覚性についての論考「言表行為なき劇的作品 ―ゲーテのモノドラマ『プロゼルピーナ』の構造」(『演劇学論集』紀要60号)を発表した。 さらに3月には「18世紀の舞台芸術にバレエが与えた影響を探る」というテーマで、成城大学において研究発表会を開催し、研究報告およびこのテーマに関するディスカッションを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した①の内容については、さらに詳細な事象を把握していく必要があると感じているが、平成27年度においては、少なくともバレエ・ダクシオン成立以前のバレエ史の輪郭を掴むことができ、本年度以降のための足場築くことができた。また②の研究を通して、18世紀の演劇事象は演劇史のさらに広い文脈から眺める必要があると強く感じたが、やはり平成27年度においてはそのための足場を築くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の課題として掲げるのは次の二つである。 まず、18世紀におけるバレエ・ダクシオンの成立と演劇作品との関係を示す具体的な事象についてとりあげ、当時のバレエ作品の姿をより具体的に描くことを試みる。また、18世紀前半に上演されたノヴェール以外のバレエパントマイム作品について、より具体的に把握することも試みたい。これらの研究は、バレエ・ダクシオン前史により具体的なイメージを与えることを目的としている。 もう一つはより副次的な課題となるが、18世紀の演劇事象をより広い文脈から捉えるすなわち近代リアリズム劇が成立してゆく過程の一環として捉える場合、18世紀の「演劇タブロー」の概念がどのように位置づけられるかについて探る。これはより準備的段階のものとして、広く文献調査を進めていくつもりである。 これらの研究を進めると同時に、これまでの研究成果を国内外に発表することにも時間を割きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の成果の一部を発表するための原稿が昨年度中に出来上がっていたが、諸々の理由で発刊が遅れてしまっている。これを印刷、製本するための予算を平成28年度へと繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し金額は、前年度の研究成果の印刷、製本代として、本年度において全額使用する予定である。
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