本研究は、人物によらない新聞1コマ漫画「社会戯評」が描く、政治疑獄事件(「造船疑獄」「黒い霧事件」「佐川急便事件」)の描写を分析し、人物偏重の政治画像報道を見直すものである。研究の目的として、1「社会戯評」の特徴の変化を裏付ける「メディア環境の考察」、2「社会戯評」の政治諷刺画としての役割を検討する「メッセージ内容の考察」、3「社会戯評」が読み手や社会に与えた影響を探る「メディアとしての「社会戯評」の検討」の3点を設定した。また,上記1と2の前提となる作業として、平成26年度からの継続した、「社会戯評」スキャニング作業を行い、1980年10月から1992年12月(掲載最終日)までを完了させた。 28年度は、上記の目的の2を中心に、「時事川柳」との比較を、そこに現れるフレームに着目して分析した。特にテーマ設定の技法において、時事内容を想起させる表現と文化指標(芸能、スポーツ、文芸、学術等々)との関係から、主題を決める時事内容のどの部分が強調されるのかを個別事例をもとに検討した。どのように読み手を笑わせるかではなく、その前にある、「何を伝えて、何を連想させるか」をもとに諷刺素材の検討を試みた。3の読み手への影響は、「時事川柳」という読者投稿作品を対象としたことにより、メディアにおける受け手のもつ諷刺への認識を把握した。送り手の側から見た機能や属性の検討は、前述した1や2においてすでに反映されている。それゆえ、メディア研究におけるフレーム概念の導入によって、受け手が送り手のどのようなフレームを享受した(しなかった)か、を諷刺画において探った。
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