研究課題/領域番号 |
26370174
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
乾 淑子 東海大学, 国際文化学部, 教授 (40183008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 楊洲周延 / 錦絵 / 明治の美人 / ジェンダー / 着物 / 女子教育 |
研究実績の概要 |
明治期の錦絵師の中でも美人画に秀でた楊洲周延およびその時代の文化・風俗・美意識について研究し、研究会等において発表し、また論文を書いた。具体的には2015年10月22日に札幌市の男女共同参画センターにおいてシンポジウム「描かれた明治のジェンダー」を主催し、報告者による「錦絵に見る明治期の女性像----芳年・周延」の他にバーバラ・ハートリー氏による「明治文豪の描いた女性像」と広瀬玲子氏による「李朝末期・近代朝鮮の女性たち」の発表があった。同時代の女性表現に関して、報告者の視野を広げるに足る興味深い内容であり、また20名ほどの参加者の皆様からも活発な意見が交換され、研究成果を市民に還元する機会の一助ともなったと信じる。 更に2015年12月13日の第12回ジェンダー史学会年次大会(於・大妻女子大学)において「楊洲周延の美人・典型としてのジェンダー」を報告した。これら2回の報告のいずれにおいても、あまり知られない周延という画家の作例に探る明治期の女性表現の問題についての関心を喚起することができたと考える。 また、東海大学国際文化学部紀要第8号に「楊洲周延はフェミニストか?」と題して論文を掲載した(pp.15-28)。 その他にも、明治期の文化的背景を探るために、久米美術館、渋沢資料館、江戸東京博物館、太田記念美術館などで開催された展示会などを見学し、国会図書館などで資料を渉猟することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年中にシンポジウム・学会などで2回の報告ができたこと、および論文も一本書けたので、おおむね順調であると考える。特に学会ではなく、一般の方々を対象として開催したシンポジウムに多くの参加があり、また非常に熱心に聴講して下さったことが印象深く、研究成果の還元の仕方について、改めて考えさせられた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度末の春休みから新たな論文を書いており、これを学会誌(国際浮世絵学会または民族芸術学会)に投稿する予定である。 また、もしできれば本年度も一般の方を対象としたシンポジウムを開催したいと考えている。その場合にはやはり、文学・社会学などの異分野からのご発表や外国人研究者の視点なども参考にしたい。 なお、6月の国際浮世絵学会に参加し、楊洲周延研究の泰斗である新藤茂氏から直接に、周延に関するご研究について、教えを請いたいと希望している。 最終的には大修館から著書を刊行する旨の依頼があるが、達成するのにはやや時間を要しそうである。鋭意努力し、できるだけ早期の完成を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度中に、明治期にイタリアで絵画製作を行ったラグーザ玉に関しても調査したいと考えていた。しかし、2015年度は他の研究課題についてであるがスイスの国際会議に招聘され、その準備等に多忙であって、ラグーザ玉に関する調査を断念した。よって、そのために用意した旅費等が残る結果になった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、パレルモ(シチリア島)でのラグーザ玉に関しての調査を敢行したい。ただ、パリにも明治期の日本女性の活躍に関する資料(万国博覧会のために出張した烏森芸者などについて)が存在することから、フランスとイタリアの両方の調査になる可能性もあり、かなりの旅費を要するかもしれない。
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