楊洲周延を中心とする明治期の女性表現について、時代風俗の再現性と当時のジェンダー認識との合一、不一致、問題意識などを考察した。 再現性の問題については、髪型、着物、洋装などの細部について非常に再現性が高いことが確認された。周延はファッションプレートや西洋楽譜などの情報源にも当たって、より正確な表現を心がけた可能性が考えられる。 また江戸幕府大奥の女性に関するシリーズ等によって人気を博した周延であるが、その一方で学ぶ女、新時代を生きる女などに大きな関心を寄せていたことが作風から推測される。他の錦絵師とは異なって、女学生などの作品に添えられた揶揄的な表現がなく、また読書する場面の割合が高い。
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