粒金の接合過程を明らかにするため、前年に続いて銀粒、金粒を銅化合物のろう材を用い接合実験を行った。 ガスバーナーを用いた銀粒(Ag)金粒(Au)の接合実験では、接合部をX線透過写真で観察した結果、接合は良好であった。また、ボールシェアテストによる接合強度の調査では、金粒と金板を銅化合物ろう材で接合した試料は、金粒と金板を三分ろう(77%Ag含有)で接合した場合と同等の54Nで強い接合強度であることが明らかになった。また、銅化合物ろう材のペーストを添加する量によって強度が異なり、ペースト量が少ないと接合面積が小さく美観は良いが強度は11Nで弱いことも確認できた。この実験でAgの接合強度はAuの接合強度より弱い結果となり、その要因はAgの加熱による脆化のためであることが、電気炉による銀の加熱実験で明らかになった。 H27年度に韓国の慶北大学校で非破壊装置(SEM-EDX)を使用して出土粒金作品の粒金破断部の組成分析を行った結果、接合部にAg濃度の高いAg-Au合金を確認した。その結果から、H28年度は、金粒と金板を純銀で接合する実験を行い、接合強度を測るボールシェアテストでも良好な結果が得られた。しかし、接合部の色味が金色ではなく銀色なため、20金や18金などの金合金での接合が望ましいのではないかと考える。 また、ガスバーナーでの粒金接合は難しく初心者では接合が難しい現状を改善するため、電気炉による簡便な粒金接合法の確立に向けて、H28年度は、電気炉中の加熱雰囲気の影響を検討した。大気中、木炭雰囲気中、黒鉛雰囲気中の条件下で銀粒と銀板の接合実験を行った。銅化合物ろう材の木炭雰囲気中、共晶点以上850℃の熱処理後のX線回折でCuおよびAgのピークを確認した。同雰囲気中では、一旦Cu-Ag液体合金状態となり、温度降下に伴いCuおよびAgの固溶体が形成され、Ag融点以下での接合が可能となったものと考えられる。
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