研究課題/領域番号 |
26370179
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平林 宣和 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (40271358)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 梅蘭芳 / 京劇 / 支那劇 / 帝劇 / 日本公演 / 大正 / 日中文化交流 / 伝統演劇 |
研究実績の概要 |
2015年度は国内および国外で、以下のような研究活動を行った。 国内については、1919年の梅蘭芳訪日公演前後の新聞雑誌記事の網羅的な調査を実施した。当時当該公演に関して報道を行った関東関西圏の新聞を対象に、公演前後数年分をチェックする作業を行い、関連の記事すべてを複製、データベースに一覧として入力した。こうした網羅的な調査はこれまで行われてこなかったものであり、今年度の最も主要な成果といえるだろう。 国外に関しては、二度の国際シンポジウムに参加し、これまでの研究成果の一部を公表するとともに、中国内外の当該分野の研究者と情報交換を行った。一つ目のシンポジウムは、2015年11月28日に中国の杭州師範大学で開催された第三回清末民初新潮演劇国際シンポジウムである。中国の清末民初期は日本の明治末から大正期に当たり、梅蘭芳訪日公演の時期とほぼ重なっている。この分野の研究者を集めたシンポジウムに参加することにより、当時の演劇界の状況や公演の背景などに関する最新の情報を得ることが出来た。二つ目のシンポジウムは、アメリカシアトルで開催された2016 CHINOPERL Conferenceである。CHINOPERLはアメリカで組織された中国の演劇研究者の学会であり、正式名称をChinese Oral and Performing Literature(中國演唱文藝研究會)という。アメリカの中国演劇研究者が集まる非常に貴重な機会であり、今回もその準備段階で、同じ梅蘭芳訪日公演を研究するアメリカの研究者と情報交換が出来た。ただし、シンポジウムに出発する当日、インフルエンザに罹患していると診断され、参加は取りやめとなり、報告は代読という形になっている。またこれまでの研究成果に関しては、主に中国語論文として複数公表している(添付の一覧参照)。 以上のように、関連資料調査と研究発表、研究者ネットワークの形成、および後掲の論文の刊行が今年度の主な研究実績となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画の一年目および二年目の主要な作業内容は、国内外の関係資料の網羅的調査と、国外の研究者とのネットワークの形成であった。国内資料の網羅的調査については、一番分量が多いと思われる新聞雑誌記事に関して、ほぼ調査を完了している。そのほか、国内の図書館、博物館に一定規模で所蔵されている資料については、一部確認作業が済んでいないが、量としては限られているため、以後短期間に処理が可能と思われる。 一方のネットワーク形成に関しては、これまで各種シンポジウムの場などを介して梅蘭芳記念館、中国戯曲学院梅蘭芳研究中心、人民大学国学研究所などとは直接の交流を行っており、当初予定していた人的つながりはほぼ確保されているといってよいだろう。 またこれまでの研究成果については、添付の一覧にあるように順次論文として公表している。 上記の理由により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当時の新聞雑誌に関する資料調査はほぼ完了しつつあるので、今後はその内容の分析に着手し、訪日公演を支えた当時の日本の状況を進めて行きたい。その過程で、調査済みのもの以外の資料についても、追加的な調査が必要になってくるであろう。また進捗状況のところで触れたように、未調査の資料も一部あるため、それらも極力早めに作業を終わらせたいと考えています。 またすでに構築した上記資料のデータベースを国内外の研究者と共有し、当初予定していた共同研究の可能性を探って行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年3月末に参加予定であったアメリカシアトルで開催される国際学会に、インフルエンザ罹患のため出席することが出来なかった。研究成果は代読により既発表となったが、旅程はキャンセルとなり、旅費が返還となった。このため、返還金額にほぼ相当する額が次年度使用額となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の国際学会は2016年度にも開催される予定なので、当該学会にあらためて参加することにより、そのための旅費として私用する計画である。
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