研究課題/領域番号 |
26370181
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
市川 真人 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60708361)
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研究分担者 |
辛島 デイヴイツド 早稲田大学, 国際教養学術院, 講師 (40736005)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国内情報収集 |
研究実績の概要 |
研究開始にあたってまず、電子書籍の実用化された2010年度以降の日本国内の電子書籍ジャンル(文芸作品)について、普及開始から5年後の現在時における状況を、主としてサンプリングと、開発者・出版社・ユーザーなどの聞き取りによって調査した。その結果判明したのは、普及当初は多様に存在した電子書籍の開発計画とフォーマットが、この数年のうちに急速に、国際的な統一企画に絞られてゆきつつあることである。反面、itunes storeやAndorid marketなどに残存する独自企画の電子書籍は、アプリ内課金型のブックスタンド的な販売システムに特化していたり、ゲームや動画コンテンツも含めた総合アプリケーションとの境界を失いつつあった。その意味では、2013年夏の応募時点の状況を前提して「文字表現がどのように変化してゆくのか」という課題は、単純に「電子書籍」というソフトウェア単独の問題ではなく、リーディング・サービスも含めた「読者」側のありかたや、活字時代の文字コンテンツを(共通化しシンプル化してゆきつつあるフォーマットの中で)どう拡張してゆくかの試みに主眼が置かれるべきかもしれないという仮説に至った。そのため、学生や若手プログラマーと共同してのソーシャル・リーディング・システムや、外部の電子出版社と連携して「どのような電子書籍コンテンツが支持されるか」といった実験の準備を開始し、2015年度内に複数(2~5プロジェクト)の試作と実験を進める予定である。海外状況については、十分なサンプルを集めることができなかったため、2015年度に継続して情報収集を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電子端末というデバイスの「ドッグイヤー」的性質と、電子書籍の立ち上げからの時間的な短さにより、課題提出時点での予測と状況の乖離が大きく、その調査と調整が必要と判断し、計画の一部修正を余儀なくされているため。
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今後の研究の推進方策 |
電子書籍の普及開始から5年が経過し、あるていど市場とシステムの状況が「シンプル化」の方向で落ち着きつつある現在、たんに「紙をスキャンして電子表示した(しおりとマーキングの機能程度はついている)」だけのものが主流となりつつある。それがたんなる保守化となることは、購買者/読者/制作者の世代交代によって、ジャンルそのものが縮小してゆく可能性がある。状況観察ではなくシステムの試作などをどんどん進め、ユーザー実験などを行うことによって、そのような縮小に陥らなくてすむ(=電子メディアの時代になお、文字コンテンツがその特性を維持できる)可能性について、検討してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画の電子書籍データベース構築のためのリサーチをした結果、国内での2014年以降の刊行物についてはフォーマットがかなり規格化され、電子書籍資料にかんして購入をいったん中断、規格化に影響されない電子書籍サンプルの制作を計画の再構築を行なっているため。
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次年度使用額の使用計画 |
データベースの構築を(e-pubなどの標準規格のものを除いた)特徴的なものに限定し、そのぶん、電子書籍化によってあらたに可能となる文芸書籍サンプルや、ソーシャル・リーディングサービスの実験ウェイトを上げる予定。次年度使用額は、そのための機材(物品・消耗品)・人件費(リサーチ、謝金)などに使用予定。
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