本研究最終年度の平成28年度には主に研究の成果を発表する機会を設けた。平成28年6月には日本音楽表現学会において「ヘンリー・カウエルと日本の関係性」と題した口頭発表を行い、前年度のニューヨークとサンフランシスコでの調査で得た一次資料をもとに、カウエルと日本の関係性の概要を演奏を交えて紹介した。7月に英国で開催されたInternational Society for Music Educationにおいては「Multicultural and Unique Educational Upbringing that Made Henry Cowell a Pioneer of American Avant-Garde」と題したポスター発表を行い、幼いころから日本人らと関わったカウエルの多文化性と特異な教育的背景が後の前衛性に影響を与えたのではないかとする考察をまとめた。研究の集大成として11月に東京オペラシティにおいて実技発表(演奏会)「大竹紀子企画コンサート:ヘンリー・カウエルが出会った日本」を行い、菅野衣川から依頼された最初期ピアノ作品「創造の夜明け」、西洋人初の尺八作品「ユニヴァーサル・フルート」(演奏:藤原道山)、雅楽から発想を得た「ハーモニカ・コンチェルト」(演奏:和谷泰扶)、唯是震一のために書いた「箏コンチェルト第2番」(演奏:後藤幹子)を解説を交え披露した。平成29年3月にはニューヨーク公立図書館にて未発表の貴重な録音媒体などを調査した。 研究期間全体を通して、研究目的に挙げた「カウエルがカリフォルニアで出会った日本」および「日本的作品」についてはほぼ全体像を解明することができた。アメリカ前衛音楽における日本文化の重要性の一潮流を探求したことに本研究の意義があり、20世紀の日本音楽について考察する上でも新しい視点を加えることができた。
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