本研究では共感へといたる方法を発達障害の人との芸術的関わりの中に見いだし「共感の設計」としてメディアアート的手法によるアプローチを通して芸術的実践の方法として公開することを目的としている。 研究方法として福祉施設で毎月実施されているダンスワークショップに参加している自閉症スペクトラムの男性と舞踊家のダンスセッションを観察しビデオで記録した後に分析するという手法を中心に進めた。 本研究で調査をした自閉症スペクトラムの男性はダンスセッションにおいて舞踊家の動きを模倣することを通してダンスを展開している。ダンスセッションのひとつの様態として模倣を捉えたとき、自閉症スペクトラムの男性には、特徴があった。ひとつは、模倣の開始における鋭敏さである。映像で確認ができる程度のごく短い時間であるが舞踊家が男性に注意を向ける前段階から男性は模倣への構えを始めることが多く、舞踊家との模倣を通したダンスへの移行が他の参加者に比べて速やかに行われることが多かった。また模倣の持続力があり、他の参加者は模倣を舞踊家とのダンスのきっかけとすることは多いが、やがて自由な動きに移行することが多いのであるが、男性は舞踊家の注意が自身に向いている間は模倣を基調にダンスを展開することが多かった。 このような特徴を持つ男性のダンス時における模倣であるが、映像記録を詳細に見て行くと、舞踊家が男性とのダンスをリードしているばかりではなく、男性がダンスをリードしている場面が多いことがわかった。こうした事例から、調査しているダンスワークショップが、舞踊家の技術だけに支えられているのではなく、男性と舞踊家の対話による創作としてダンスセッションが成立していることがあきらかとなった。 今後は、舞踊家と自閉症スペクトラムの男性のダンスセッションを対話的創作として捉え、その多様な形態を伝えるメディアの在り方を探って行きたい。
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