最終年度に予定されていた通り、米国ボストンバレエ・バレエ団が障害者のために実施するアダプティブ・ダンスの訪問調査を行った。聞き取り調査の他、アダプティブ・ダンス・ティーチャー・トレーニング・ワークショップに参加した。これは、アダプティブ・ダンスのフレームワークの他、対峙すると想定される障害等について学び、アダプティブ・ダンスと同様のプログラムを自ら実施するための基盤づくりとなるものである。このワークショップを通して判明したアダプティブ・ダンス指導体制の特徴は、バレエ指導者が音楽や障害の専門知識を持つスタッフと協働する点と、カリキュラム等の指導要領に値する文書があるという二点であった。前者については、初年度に実施した英国のフリーフォール・カンパニー調査でも見られた点であり、すでに論証を行ったところである。今回はあらたに、指導要領に値する文書の存在について考察と分析を進めることができた。 その結果、専門的知識を携えたスタッフとの連携だけでなく、明文化されたカリキュラム等の活用が有効であることが導き出された。カリキュラムを文書化し計画的な指導内容を定め、共通認識を明確にすることで、周囲の理解を得ながらバレエ指導者によるプログラムの提供と発展が見込めることがわかった。 なお、アダプティブ・ダンスに関する考察と分析の結果から執筆した論文は、日本音楽芸術マネジメント学会の学会誌掲載に向けて査読中である。
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