研究課題/領域番号 |
26370200
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
武井 和人 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (80154962)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 書陵部 / 図書寮文庫 / 尊経閣文庫 / 歌会 / 室町和歌 / 足利義尚 / 釈文 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、以下の調査・研究を行った。 (1)宮内庁書陵部図書寮文庫蔵歌会資料の書誌調査・釈文・略解題作成。(2)前田育徳会尊経閣文庫蔵歌会資料の先行的調査(主として目録、国文学研究資料館蔵紙焼等による)。(3)前田育徳会尊経閣文庫蔵『常徳院殿御詠草』の書誌調査・釈文・略解題作成。(4)略解題作成資料として、宮内庁書陵部図書寮文庫蔵『管見記』(西園寺本)〔F11・1〕の内の『公名公記』内永享十年分(春夏秋冬)の紙焼を入手し、考察を加え、略解題に取り入れることが出来た。 (1)では、以下の歌会資料について、釈文・略解題を作成し、『研究と資料』誌に公刊した上、埼玉大学のリポジトリである「SUCRA」に全文のPDFを公開した。 1三条西家着到百首和歌(五〇三-二五三) 2伏見宮家五十首和歌 明応五・一〇(伏-一七) 3続三十首和歌 大永元・一一(伏-二四) 4伏見宮家続百首和歌 大永三・五(伏-二五) 5三十三首釈教和歌(伏-五三三) 6伏見宮家百首和歌 冬恋雑(伏-五四五) 7点取和歌冬伏見殿十首(伏-五七九) 8応永十九年正月十八日広橋家月次始歌会(五〇一・八〇六) 9応永十九年十二月九日仙洞三席御会(二一〇・七一五) (2)では、主として『尊経閣文庫国書分類目録』を利用しつつ、一部、国文学研究資料館蔵紙焼、また、先行して入手済の武井架蔵紙焼等を参照しつつ、平成28年度に調査すべき典籍を選定し、一部先行的に調査を開始した。 なお関連して、以下の日程・内容で、関連する文献資料の調査を実施した。平成27年10月22日・住吉大社御文庫(『古今和歌集見聞愚記抄』)、同年12月5日・堺市立中央図書館(『古今和歌集見聞愚記抄』)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宮内庁書陵部図書寮文庫所蔵の歌会資料は、当面関連すると思われるもの約100点の典籍の紙焼を入手し、整理・検討が完了したもので、従来未紹介のものを優先的に釈文・略解題を公刊して、研究者に研究資料として提示するとともに、研究が総体的に遅れているこの時代の和歌研究に関して、資料論的アプローチを試みて来た。検討すべき資料があまりにも厖大、かつ、複雑な関係性にあるため、この作業が完了する時期を現時点で見通すことは出来ないが、まずは、未刊のものを優先し、その次に、既刊であってもより善本を以て作成した釈文を提供することにしたところである。 一方、室町初期に遡り、時系列的に、未刊歌会資料を公刊して行く作業にもとりかかり、宮内庁書陵部図書寮文庫蔵『応永十九年正月十八日広橋家月次始歌会』(五〇一・八〇六) 『応永十九年十二月九日仙洞三席御会』(二一〇・七一五)の釈文・略解題を公刊した。 以上のように、研究は順調に進捗しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主として宮内庁書陵部図書寮文庫蔵の歌会資料の内、室町前期にまで遡及して、未刊の歌会の釈文・略解題、また、より善本を底本とした再釈文等を論文として公刊して行きたい。現在、永享期のにおける最初の禁裏歌会かと目される六度の歌会資料を含む宮内庁書陵部図書寮文庫蔵『禁裏御会和歌』(五〇一-二九〇)の釈文・略解題を作成中である。 また、中世歌会全般に関する研究会を、平成26年度に続き、9月に開催予定である。この折に、本研究の締めくくりを見越した総括をするとともに、本研究が終了する平成28度末以降の研究継続に向けて、その目標、体制、予備的調査等を、検討の上定めることとしたい。 最後に、いままで公刊した歌会資料に対して、訓み・タグ等を付し、データベース化のための準備作業を進め、今年度中には完了したい。
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