平成28年度は、以下の調査・研究を行った。(1)宮内庁書陵部図書寮文庫蔵歌会資料の書誌調査・釈文・略解題作成。(2)興福寺国宝館及び静嘉堂文庫所蔵歌会資料の調査(紙焼を入手出来たものを優先的に行った)。(3)略解題資料として、平成27年度に引き続き、宮内庁書陵部図書寮文庫蔵『管見記』〔F11・1〕の内の『公名公記』永享5年記、及び、同柳原本『永助法親王記』〔柳・368〕の紙焼を入手し、考察を加えた上で、略解題に取り入れることが出来た。(4)関連する和歌資料として、十市遠忠の自歌合に関する新見・新出資料についても調査・研究を行い、論文二点を公刊した。 (1)(2)に関しては、以下の歌会資料について、釈文・略解題を作成し、研究誌『研究と資料』において公刊した。①『禁裏御会和歌』(501・290)※「永享十年二月二十八日内裏和歌御会」「永享十年四月十日禁裏月次当座御会(初度)」「永享十年四月十六日内裏月次当座御会(月次御哥第二度)」「永享十年四月二十八日内裏月次当座御会(月次御哥第三度)」「永享十年五月十日内裏月次当座御会」「永享十年五月十九日内裏月次当座御会」②「永享四年二月十一日室町殿月次和歌」(底本:興福寺国宝館蔵『習見聴諺集』第六本)、永享五年三月二七日足利義教邸初度御会和歌(底本:静嘉堂文庫蔵『瑠璃壺百首)。また、勤務先(埼玉大学)のリポジトリである「SUCRA」において、当該論文を公開したところである。 (4)でいう「新資料」とは、本年古書肆目録に出現した従来未見の『十市遠忠百番自歌合』である。遠忠詠草と密接な関係性を有し、鳥居小路経厚の和歌活動という点においても、重要な新発見資料である。釈文・影印の公刊には至らなかったが、それは今後の課題としたい。
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