研究課題
基盤研究(C)
『懐風藻』の伝本に関する調査を行い、江戸期の詞華集および史書に引用された『懐風藻』本文、版本の書入内容、江戸末期成立の『懐風藻箋註』も含めて総合的に考察してきた。その結果、一つの祖本から、書写の過程で複数の異なる系統が生み出される過程と、それらが屋代弘賢校本を介して群書類従懐風藻で合流し、新しい特異な複合本文が編集される過程とを明らかにした。また、本文研究で得られた知見に基づき、「懐風藻校本」を作成し、連載した。
日本上代文学
これまで『懐風藻』本文については、昭和32年に大野保氏が作成した校本を参照するしかなかった。本研究によって、それ以降に発見された本文、および本研究期間内に新たに発見した本文も加え、さらに江戸期の史書および詞華集に引用された『懐風藻』本文、版本書入の本文情報をも掲載した「懐風藻校本」を公開した。そのことにより、精度の高い本文考証と、信頼性の高い本文に基づく作品研究とが可能になるという学術的意義がある。そして、それは日本文学・文化の形成過程の一端を明らかにすることにつながるという社会的意義がある。