本研究は、これまで、日本における漢文笑話作品集のうち、『笑門』(1797)、『胡盧百転』(1797)、『笑堂福聚』(1804)、『善謔随訳続編』(1798)、 『奇談新編』(1842) などの基礎的調査と訳読を終えたが、今年度は『笑堂福聚』(1804)について、個々の笑話を先行小咄との関連性 ・中国由来の 典故の使用実態・使用語彙の特質などの側面から考察し、訳読および解説とともにその個々の笑話の考察を論文として投稿した。その中で、『笑堂福聚』の作者がどのような意図性を持って笑話を記したかについても分析し、また、引用された文章や語彙から、当時の漢学者がどのような書籍を読んでいたかについても明らかにした。また、『笑堂福聚』は、それ以後の漢文笑話にも影響を与えるが、その影響についても言及した。一連の漢文笑話集の訳読によって、漢文笑話集間の影響関係についても明らかになり、江戸後期の漢文笑話出版の意味についても明確にした。
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